サ活ブームで大人気「今どきオシャレ銭湯」の実態 「経営難の銭湯」をリニューアルした夫婦の戦略
黄金湯はお客も若者が多いが、スタッフにも若者が多い。なぜ銭湯で働きたいと思ったのか聞いてみた。
「いろいろな人と話したいと思った。銭湯は小さな子からお年寄りまで来るから」と1人の男性は答えた。
また次に聞いた1人は黄金湯スタート時からの勤務。こちらも人との交流を理由に挙げた。
「地元のコミュニティに溶け込んで、近い距離で話せるのが銭湯の魅力。またカフェや宿泊施設などのプロジェクトにも関わり、いろいろな経験ができた。将来は故郷に帰って民泊をやりたいと思っている」
おしゃれな空間、目新しい娯楽というだけでなく、人とのコミュニケーションも銭湯の魅力となっているようだ。
設備だけではなく、ソフト面も工夫
このように黄金湯では、リノベーションにより銭湯文化に新たな価値づけを行い、新しい世代へと魅力を伝えることに成功した。
実は新保夫妻は黄金湯の前にも「成功体験」を積み上げてきている。
2人がもともと営んでいる「大黒湯」だ。卓也さんは大黒湯の3代目。
2012年に引き継ぎ、当時90歳の母を含む、家族4人で経営してきた。しかし黄金湯と同様客は減り続けた。
「目の前に住んでいる人も来てくれない。現代に必要とされていない。まずは多くの人に、銭湯の存在を知ってもらうことが先決だと思った」(卓也さん)
もとは薪を貯蔵していたスペースに設置した露天風呂や2種類のサウナ、湯上がりにゆったり休めるウッドデッキなど、くつろぎを楽しめる場としての改装を行った。
また地下水の水質を調べたところ温泉であることがわかったため、温泉認定を取得した。温泉の場合、水を引き入れるパイプの口径などにも細かい規定があるため、新たに工事が必要だったという。
こうしたハード、つまり設備だけではなく、ソフト面も工夫した。オールナイト営業に都内で初めて踏み切ったほか、企業や自治体とコラボしてのイベントも実施したのだ。例えば2016年に資生堂のシャンプー、コンディショナーブランドTSUBAKIとコラボ。2月11日から3月31日までの50日間、「TSUBAKI湯」を展開した。浴場や脱衣所などが椿の絵やオブジェで飾られたほか、同ブランドのシャンプーとコンディショナーが浴場に置かれ、無料で提供された。
「一瞬、シャンプーの泡で床が見えなくなったことも。そのぐらいお客様が入りました」(朋子さん)
このようにして徐々に集客を増やし、現在は地元客に加え、遠方からの客も訪れる人気の銭湯となった。
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