「iPhoneに強い」村田製作所が抱く王者ゆえの悩み スマホ成熟化で主力製品を取り巻く環境が変化
スマホ1台に使われるMLCCの数は、ハイエンド品の1000個以上、ミドルエンド品の800個前後に比べると、ローエンド品では500個前後と大きく減る。ローエンドスマホで高機能化が進んでも、1台当たりのMLCC搭載数には大きな隔たりがある。
加えて、MLCCの最先端品という質の面でも、ローエンドスマホは搭載数が少なくなる。
スマホの分解調査を手がけるフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズによると、2020年発売の中国シャオミのローエンド品では、「0402」のMLCCがまったく使われていなかった。
「0402」より少し大きいサイズのスマホで使われるMLCCには、日本の太陽誘電や韓国サムスングループの電子部品会社・SEMCO、台湾のYAGEOという強力なライバルがいる。さらに大きいサイズの汎用品のMLCCは、中国や台湾の複数メーカーまでも参入している市場となり、価格競争は一段と激化する。
「村田製作所の品質、供給力、サービスを認めていただいてビジネスをしているので、汎用品でもものすごく利益率が低いわけではない」(北部長)という。だが、最先端品と比べると収益性の低下は免れないはずだ。
ギャラクシーとiPhoneで搭載数に差
強みを持つ最先端のMLCCの使用状況はどうか。実はスマホの高機能化が進んでも、多くのスマホメーカーからすると、小型だが高価なMLCCを使う意欲は決して高くない。
2020年に発売されたサムスン電子のギャラクシー S20 5G。販売価格は約11万円だった。フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズによると、こうした高級機種であっても、搭載されたMLCCのうち「0402」が使われたのは約1割にとどまった。
一方、2020年に発売されたiPhone12では、搭載されたMLCCのうち「0402」の使用比率は約5割に上った。iPhone12とギャラクシー S20 5Gは同価格帯であったにもかかわらず、である。
今年発売のiPhone15も、MLCC搭載数は増えたが約5割という「0402」の使用比率はiPhone12とほぼ変わらない。
同じハイエンドスマホでも、使われる部品に大きな違いが生まれるのは「設計思想に違いがある」(フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズの柏尾南壮CEO)からだ。
iPhoneでは「頭脳」に当たるプロセッサーのサイズに合わせて基板の幅が決まるため、基板の幅が狭く、プロセッサーと一緒に使われるMLCCも小型品が求められる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら