「iPhoneに強い」村田製作所が抱く王者ゆえの悩み スマホ成熟化で主力製品を取り巻く環境が変化
アップル以外のスマホメーカーは、基板面積にゆとりを持たせる傾向がある。そのため小型だが高価なMLCCを使う必要性が低く、「0402」の使用量は少ない。
つまり村田製作所にとっては、iPhone向けが伸びない限り、もっとも強みを持つ製品の売り上げが伸びないのだ。だが、iPhoneにもかつてほどの勢いはない。
村田製作所が発表している、スマホの台数に換算したスマホ向け電子部品市場の需要は2016年度の15.6億台がピーク。2023年度の予測は11.1億台にとどまる。2021年度までの13億〜14億台という水準に戻るには、「数年かかる」と村田会長は話す。
車載向けが伸びるのは確実だが
スマホ向け市場の停滞感が強い中、同社が期待を寄せるのは車載向けだ。「スマホにも自動車にも全力で対応しているが、需要が伸びる確実性でいうと自動車のほうがポジティブな見通しを持っている」(北部長)。
エンジンを搭載し、自動運転機能がまったくない車に使われるMLCCの数は約3000個。だがハイブリッド車かつ、ハンドル操作などを部分的にシステムが行うレベル2の自動運転になると、必要となるMLCCは6000個を超える。
決められた条件下ですべての運転をシステムが行うレベル3の自動運転機能を持ったEV(電気自動車)では、1万個を超えるMLCCが使われる。自動車の電動化や自動運転の進展が加速することで、今後MLCCの使用量は増加していく。しかも自動車は、スマホほど生産量が急激に増減しない。
収益性についてはどうか。「スマホ向けのMLCCは汎用品での競争が激しくなっている。現時点では、市況の関係もあって自動車向けのほうが収益性が高い」。セラミックコンデンサ事業本部事業企画部の立川英和部長はそう話す。
自動車で使われる部品は、耐圧性能など信頼性が非常に重視される。村田製作所に対する顧客の評価も高い。スマホ向けの先端品と車載向けの高信頼性のMLCCでの収益性は同等の水準だ。
会社全体の売り上げで最大なのは依然としてスマホなどの通信向け。2023年4~9月期の売り上げ構成比は40.5%に達する。自動車などモビリティ向けの売上高構成比は26%だ。ただ、通信向けなどほかが減収した中で、モビリティ向けは唯一増収となり、構成比を前年同期の20.2%から大きく伸ばした。
しかし、iPhone中心のスマホ頼みの構図は当面続くだろう。MLCCの搭載数はハイエンド品で1000個強とはいえ、スマホは年間11億台も売れている。自動車では1台当たりの搭載数が3000〜1万個とスマホより多いものの、年間の新車生産台数は約8500万台だ。
村田製作所はいま成長の踊り場に差し掛かっているといえる。
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