日本の「バブル」がはじけるとき 日本版リーマンショックは本当に来ないのか

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余談ですが、今でも経営者の方とお話をすると、多くの方が「中国13億人の市場が重要だ」、とおっしゃる方が多数いるのに正直驚くわけです。

アメリカ並みの所得水準を維持している人口はせいぜい1億人が限界で、これから日本でさえびっくりするくらいの労働人口減少と高齢化が進む国が中国なのであって、さらに言えば法律などの社会整備はアメリカや日本に遠く及んでいません。

労働争議、撤退にかかわるさまざまな争議をみていると、とてもまともな先進国と言えるような状況ではなく、日本企業による損害賠償は最初から「想定内」。何が起きても日本が悪い、という結論が最初から決まっているわけです。

頼みの綱の労働賃金もどんどん上昇を続け、今や生産地としても市場としてもその魅力は急減していると言っていいでしょう。中国市場に関しては一考する時期すら過ぎていると見ています。

日本はバブル状態か?はじけるなら、何が原因に?

さて、転じて日本。

株式時価総額がいよいよバブル期を超えた、などとニュースになっていますが、バブル期当時の日本のGDPなどは300兆円台でした。その時の東証1部の時価総額が約590兆円も行ったからこそ「バブル」と呼ばれたわけで、現在の名目GDPは500兆円もあるわけですから、今の時価総額が590兆円を超えたといっても、それがバブルだとは必ずしも言い切れないでしょう。過去にも時価総額が名目GDPを超えた時は何度かあり、最近では小泉改革のピークでもこれを超えていました。

ただし・・・・

吉崎達彦さんもよくおっしゃっているように、結果的にはその株式時価総額が名目GDPを超えたところが株式市場のピークだった、ということになっています。つまり、ある種の「達成感」が相場には出てくるもので、そのあたりの目安がGDPの時価総額、ということなのかもしれません。結果論だと言われればそれまでですが、一応知っておいた方が良いデータではあります。

山崎元さんは「バブルの最中には誰もそれをバブルと認識できないために、参加している限り、そこから降りようとする人はなかなかいない」、とよくおっしゃいます。つまりバブルの当事者が相場を終結させることは過去を見てもとても難しい。

日本のバブル期も結局総量規制という外圧で終了させられたわけですし、リーマンショックも市場参加している当事者ではなく、証券化商品の根源的設計ミスという問題が引き金を引いたわけです。

となると今回も株式市場の転換点も何らかの外圧によって引き起こされると言うことになるのではないか、と予測しています。ただし、それは「ギリシア危機」や「ロシア逆噴射」ではないでしょう。あまりにも影響が小さすぎます。中国経済の急減速も輸出依存率がGDPのせいぜい10%ほどしかない日本にはそれほどのインパクトはない。

では何か??? 本当は書きたくないのですが、ワタクシは個人的に、日銀のバズーカ緩和が引き起こしつつある国債市場の流動性喪失が遠因になると見ています。

国債市場が暴落するくらいなら、それ自体はどうってことはないのですが、流動性の喪失=売買不能=本当の価格がどこにあるかがわからない=資産価値の把握不能でお互いの金融機関がクレジットを融通できなくなる・・・・そう、まさにリーマンショックを引き起こした資産価格の把握不能という事態こそ、現代の金融機関にとってのアキレス腱であったことが明白になっています。

それも今回は証券化商品ではなく、国債で起きるわけですから本当に相手の金融機関にどれだけの資産劣化が起きているのか、把握はほぼ不能でしょう。理論値でこれだけあると言われても、市場で売れなければ意味がないことはリーマンショックで経験済み。日銀はこのリスクをどれだけ理解しているのか、私は不安でなりません。

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