神宮外苑だけじゃない「東京圏のスタジアム問題」 需要を見据えた長期的ビジョンや全体計画が必要

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野球場、ラグビー場とも規模を大きくする計画だが、第二球場や軟式野球グラウンドをなくすことで敷地に余裕が生まれ、中央広場などのオープンスペースを新たに整備する。それによって近隣住民や社会からも十分に理解を得られると事業者側は考えていたのだろう。

「樹木の本数も増やすし、緑の割合も25%から30%に、誰もが自由に入れるオープンスペースも21%から44%に増えるのに、なぜ理解が得られないのか」。三井不動産役員からはそんなボヤキも聞こえる。

事業者が見誤ったのは、神宮外苑が都心部で貴重な自然環境が残された緑の空間に対する人々の認識の高まりだろう。いくら新しい樹木や芝生を植えて緑を増やしても、樹齢100年の樹木を伐採したり、イチョウ並木への悪影響が懸念されたり、超高層ビルを建てるような計画では理解を得るのが難しくなっているのだ。

敷地に余裕がない神宮外苑地区

もともと神宮外苑地区は、巨大なスタジアムをいくつも建設できるほど敷地に余裕があるわけではない。

以前に記事「神宮外苑『樹木伐採』再開発の前にあった幻の計画」で紹介したように、2003年に策定された「明治神宮外苑再整備構想調査」報告書では、国立競技場を創建当時の規模に縮小してメモリアル競技場として整備することを提案していた。オリンピックや世界陸上など世界規模の大会では、メイン会場に1周400mのサブトラックの併設が義務付けられているが、神宮外苑にはサブトラックを併設できる敷地がないからだ。

東京都も当初は、メインスタジアムを晴海地区に建設する計画だったが、2009年のラグビーワールドカップ2019の招致決定を受けて、神宮外苑での国立競技場建て替えを決定。2013年には東京五輪2020の招致も決まり、サブトラックは仮設で対応することにして建て替えが進められてきた。

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