給与倍増も!米自動車労組「大幅賃上げ」の波紋 賃上げ圧力は在米の日本メーカーにも波及する

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縮小

論争を呼んだ交渉の間、フォードは、大規模な賃上げを行えばEV市場でテスラに一段と後れをとることになると訴えた。ピックアップトラック「F-150ライトニング」とSUVタイプの「マスタング・マッハE」はフォードにおけるバッテリー駆動モデルの2大車種だが、今年の販売は期待外れのものとなっており、同社は最近、ライトニングの増産計画を縮小した。

「EVの価格には大きな下落圧力がかかっている」とローラーCFOは述べた。

一方でテスラや、トヨタ、ヒョンデ(現代自動車)、日産、ホンダなどアメリカ国内の工場に労働組合がないほかの自動車メーカーは、これから賃上げの圧力に直面する可能性があり、そうなれば、これまであったとされるコスト優位性がそがれることになる。

UAWは、こうしたメーカーの工場の組織化に取り組む意思を明確にしている。フォードとの賃金協定は、UAWがここ何十年かで勝ち取ったものの中でも最大の賃上げを保証しており、団体交渉の強力な宣伝として組織化に役立つ可能性が高い。

「ヒョンデやトヨタもこれを見るがいい」

「イーロン・マスクはこれを見るがいい」。組合労働者と密接な関係にある権利擁護団体「ジョブズ・トゥー・ムーブ・アメリカ」のマデリン・ジャニス事務局長は、「ヒョンデやトヨタもこれを見るがいい。労働者が立ち上がる、新しい時代がやって来たのだ」と語った。

マスク氏が経営するテスラや、BMW、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンのようにアメリカに労働組合員のいないほかの自動車メーカーは、労働組合の活動家を寄せ付けないために、賃上げを率先して決めて機先を制しようとするかもしれない。

「組合組織化を阻止する戦略のひとつは賃上げだ」と、労働研究と雇用関係を専門とするラトガース大学のレベッカ・コリンズ・ギバン准教授は語る。

 EV市場での競争力は、フォード、GM、ステランティスなどが革新的な製品を生み出す能力を持っているかどうかで決まると、ギバン氏をはじめとする専門家は指摘する。その責任は経営者のものであって、組立ライン従業員のものではない。

「EV市場で、これらの企業が課題を抱えているのは明らかだ。(課題対応に)制約となるものは、今回の協約にはまったく含まれていない」とギバン氏は言う。

(執筆:Jack Ewing記者、Neal E. Boudette記者)
(C)2023 The New York Times

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