給与倍増も!米自動車労組「大幅賃上げ」の波紋 賃上げ圧力は在米の日本メーカーにも波及する

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技術シフトに「取り組んでいる間に、労働争議に巻き込まれることはなくなった」とマレー氏は言う。

フォードが26日に発表した7〜9月期決算は440億ドルの売上高に対し、12億ドルの黒字(前年同期は8億2700万ドルの赤字)だった。ただ、EV部門は、新技術への投資と競争激化による販売価格の低下から13億ドルの赤字となった。

UAW組合員5万7000人のうち、ストライキに参加していたおよそ1万7000人のフォード作業員は間もなく工場に戻り始めるとみられている。

給与がほぼ倍増する従業員も

「フォード勤務30年の私が見てきた中で、最高の労働協約だ」。エンジニアと協力して組み立てラインに作業台の配置を行っているロバート・カーター氏(49)は、新たな協約で最大の恩恵を受けるのは、これまで時給が最高レベルの32ドルをはるかに下回っていた若い労働者になるだろう、と話した。こうした労働者の賃金は、今後4年半で時給40ドル以上に上がる。

「給料がほぼ倍になる人もいる。それが大きくないと言えるだろうか」とカーター氏。

バークレイズのアナリストは、新しい労働協約に盛り込まれた昇給、退職手当の改善、その他の措置にかかる費用は、4年間の契約期間終了までに年間10億〜20億ドルになると推計した。これは売上高の約1%に相当する。

ローラーCFOは電話決算説明会で、この協約によりフォードの労務費は1台あたり平均850〜900ドル上昇するだろうと語った。

UAWとの交渉結果に批判的なアナリストもいる。追加費用のせいで競争上著しく不利になる可能性があるため、フォードがメキシコへのさらなる生産移管を進めるきっかけになるのではないか、と彼らは言う。

「競争が極めて厳しい市場で、制約が一段と増すことになる」。コックス・オートモーティブのチーフエコノミスト、ジョナサン・スモーク氏は、「この妥協案が将来的にフォードの業績を制限するか、代替案の検討を余儀なくさせることは間違いない」と話す。

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