おしゃれな街「自由が丘」密かに抱いていた危機感 高層ビルなかった街が大型再開発に踏み切る訳

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駅周辺のあちこちでさまざまな動きがあるわけだが、気になるのは自由が丘らしさはどうなるか。

「サンセットエリア、南口地区はこれまでと変わらないので自由が丘らしさは周辺に残ります。逆に駅近くの商業施設の集客力が増えることでそこからのシャワー効果で周辺部にも人が増え、結果として街が面的に大きくなるのではないかと見込んでいます」(岡田氏)

ジェイ・スピリットと目黒区が連携して作った「自由が丘未来ビジョン」によると再開発エリアを含む駅周辺の商業地域は歩行者中心の「楽歩地区(らっぽちく)」とされており、できるだけ多くの歩行者空間、日本一多い座れる場を創り出すことが目指されている。

九品仏川緑道に匹敵するようなオープンスペースの整備計画もある。再開発建物内に平面、立面の細街路を作ることも構想されており、それを見る限り、自由が丘らしさは形を変えつつも最大限に尊重されている。駅前の風景は変えるとしてもこの街らしさは変えない。それが現在、開発に関わっている人たちの思いであるようだ。

従来とは違うイオンモールも誕生

このほか、2021年に閉店し、自由が丘周辺住民に多大なショックを与えたスーパー、大丸ピーコックの跡地はイオンモールの商業施設「JIYUGAOKA de aone(自由が丘デュ アオーネ)」として2023年10月に開業した。従来のイオンモールを想像した人たちからは自由が丘にそぐわないのではないかという声も聞かれたが、実際にはデッキ、緑の多い開放的で自由が丘らしい建物になっている。

自由が丘
従来のイオンモールとは雰囲気の違う「JIYUGAOKA de aone」。従前よりも建物としては小さくなっているが、テラス付きの飲食店を設けるなどオープンな作りになっている(写真:編集部撮影)

これは建物背後が規制の厳しい第一種低層住居専用地域で斜線制限などがあるため、セットバックの多い建物にならざるをえなかった結果。とはいえ、商店街にも相談、逐次報告があったそうで、商店街が大事にする自由が丘らしさもおおいに考慮されたのではないかと思うのだが、どうだろう。

参考資料/「自由が丘」ブランド 自由が丘商店街の挑戦史 岡田一弥・阿古真理著 産業能率大学出版部 2016年 
中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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