ジェネリック最大手「サワイ」、呆れた不正の実態 供給不足続くさなか、見過ごされた3度の合図
中にはカプセル溶出率が「0%」となる個体も複数あったという。報告を受けた会社は現場でカプセルの詰め替えが行われていたことを認識し、調査委員会を設置した。調査中の7月には、テプレノンを自主回収している。
沢井製薬は、今回の不正がテプレノンの有効性や安全性への影響を与える可能性は低いとし、「重篤な健康被害が発生する恐れは極めて低い」と説明する。だが、薬の服用者が求めた効果が得られていたかどうか、現時点で十分な検証がなされたわけではない。
実は不正が継続的に行われるようになった2015年以前にも3度、テプレノンで前述の試験に適合しない結果が出ていながら、不適切な対応を取ってきたことが判明している。
1度目は2010年。試験でカプセルが溶けにくいテプレノンを発見した担当者が、工場長に報告した。すると原因特定のためにカプセルを取り換えてみるよう指示され、新たなカプセルに詰め替えたところ試験に合格。
しかしその後、試験結果を踏まえた製品回収などの措置はとられず、本件について報告を受けた本社による対応の記録もなかった。
続いて2013年にも溶けにくい薬が検出されたが、工場長は現場のチーフに「カプセルの影響を確認のこと」と手書きで指示を出した。これを現場は詰め替えの指示と受け止め、カプセルを取り換えて試験を実施。2014年に三たび不適合の薬が発見されると、現場はカプセルを取り換えることで試験に適合したものとした。
いずれのケースでも、当初の試験結果に対する適切な対応や検証は放置された。本来、医薬品の製造管理や品質管理の基準を定めたGMP省令では、試験に合格しなかった薬について適切な管理や報告、回収などの措置を検討することが必要とされている。工場での対応は省令違反に当たる。
法令より上司の指示を優先する風土
不正が繰り返されてきた背景について、調査報告書は「法令よりも上司の指示を優先する」という異常な組織風土があったと指摘する。
2017年以降、生産本部長を務めていた沢井製薬の木村元彦社長は会見で「工場組織では上から下に指示命令を出すのも必要な部分があるが、その部分の指示が強すぎたために、誤った認識となっていた可能性もある」と反省。過度な上下関係が遠因となった可能性があるとした。
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