小日向文世、69歳の今思う「みっともなくていい」 自分をさらけ出して頑張っている人はカッコいい
── この年齢で、3回目を演じるからこそ、感じるものはありますか?
小日向:仲間同士、ただ大酒飲んで賭け事してというだけじゃなくて、最後はクリスマスの朝らしい、ちょっとした神の祝福が訪れるんです。貧しくてどうしようもないオヤジたち、日々何が楽しいのっていう生活をしている人たちにも、生きている幸せを感じる瞬間がある。そんな温かいものが根底に流れているのがこの作品です。
改めてこの作品を演じるときは、前回より「人生って何だろうな」って考えるのかもしれないですね。一緒に俳優を続けてきた仲間を見て、「ああ、こいつも年取ったな」って思うだろうし、自分も70歳近くなって、以前より死について考えるようになったから「人生ってあっという間だな」って思うだろうし。実際、再演から今までの9年間も、すぐ過ぎたように感じますからね。ただセリフを覚えないといけないから、感慨に浸ってばかりじゃあいられないですけど。
みっともなさもさらけ出す。それもカッコいいと思えるようになりました
── LEON.JPでは毎回、「カッコいい大人の男とは?」とお伺いしています。小日向さんはすでに十分、カッコいい大人なのですが、若い頃に想像していたカッコいい大人になれた、近づけたと思いますか?
小日向:若い頃、カッコいいなと思っていたのは、自分の考えとか生き方を、理路整然と話せる人でした。言葉ってものすごく大事だと思っているんですが、それをきちんと使って相手に伝えられる人というのかな。教養があるうえに、その人の人生も積み重ねて、言葉にできる、そういう人ですね。
俳優だったら芝居だけしていればいい、と思わずに、人生、世の中、政治、何でもいいんですけど、自分の考えをしっかり言葉で伝えられる。そういう“頭のいい人”に憧れていました。
── 小日向さんもそういう人に見えますが……。
小日向:いやいや、全然(笑)。僕は劣等生でしたからね。高校時代に麻雀に明け暮れて受験から逃げちゃったくらいだから。後になって、その罰が随分当たったなと思いました。自分の息子たちなんか、ちゃんと大学を出ているし、たまに話すと、「僕よりずっと教養があるな、勉強したんだな」とうらやましくなりますもん。