小日向文世、69歳の今思う「みっともなくていい」 自分をさらけ出して頑張っている人はカッコいい
── 長年、第一線で活躍されている方々ばかりですね。
小日向:全員、小劇場出身で、知り合った頃は20代だったのが、この間のことのように思えるんですけどね。僕は23歳で劇団「オンシアター自由劇場」に入ったのですが、当時、座長の串田和美さんが、すごく大人に思えた。でも串田さんは僕より12歳年上だから、35歳だったんですよね。その頃の僕からしたら、70歳近くなった俳優が集まって芝居をするなんて、考えられなかったな。
仲間同士、大酒飲んでご機嫌になる……共感できる人も多いのでは?
── 俳優陣はもちろんですが、作品そのものも魅力的ですよね。
小日向:ストレート・プレイ(会話劇)でありながら、ファンタジーが同居している珍しい作品です。アイルランドの小さな街で、決して幸せな人生を送っているとは言い難い男たちが、クリスマスイブに家に集まって、浮かれて、お酒を飲んでベロベロになって、ポーカーに興じる。僕が演じるロックハートは、バーで誘われて後から家にやってくるんですが、実は偶然じゃなくて……という役割です。ロックハートは、最初からやりたいと思った大好きな役。ちょっと不思議な存在で、やり甲斐がある。またほかの役も、それぞれにドラマがあって、葛藤を抱えていたり嫉妬深かったり。すごく人間臭くて面白いんです。
── 普段は“イケおじ“の皆さんですが、演じるのは“ダメオヤジ”ですね。
小日向:そうそう。登場人物は、酒と賭け事が大好きな、無邪気で、みっともない人たちばかり。リチャードなんか、目が見えなくなってトイレまで弟に頼るようになっているんだけど、お尻に乾いたウ●コがついているのをブラシでこすって落としたことまで、仲間にうれしそうに話してしまうくらい。野郎しかいないから、全然、カッコつけないんです。途中から来た紳士然としたロックハートを、ほかの皆がポーカーでカモろうとしているのも見え見えだし。
ここに女性が1人混じっていたら、ちょっと無理しちゃうんでしょうけど、それがまったくなくて、何でもかんでもさらけ出す。暮らしは恵まれてないんだけど、仲間同士、大好きなウイスキーを飲めるのがうれしくて楽しくて、ワイワイしちゃう。そういうところがとてもいいし、舞台を観るお客さんにも共感してもらえるんじゃないかな。ダメだけど、なんだか可愛いオヤジたちですよね。
しかもそれを、70歳近い俳優が集まって演じるんだから、自分たちでも「よくやるよな」って思います。とにかく、セリフを飛ばさないようにしないと。セリフの掛け合いがあっての作品だから、そこはしっかりしないとね。