【産業天気図・空運業】燃油高と安全問題直撃で明暗分かれるが、総じて『雨』

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運輸業界の中でも、空運業は営業費用に占める燃油費のウエートが高いため、ジェット燃料の高騰が各社の収益に大きな影響を与えている。足元でのジェット燃料価格は若干、下がり気味になってはいるが、大手の日本航空<9205.東証>、全日本空輸<9202.東証>とも今期分は9割方、燃油価格がヘッジされているため、今後燃油が仮に下がっても、今期への影響は限定的となっている。もっとも、上場3社の中で比較すると、主として燃油以外の要因によって明暗が分かれている。
 好調組は全日空。会社予想は期初の小幅減益予想が据え置かれているが、『会社四季報』では、前回05年秋号での独自の小幅増額予想(減益幅が縮小)に引き続き、15日発売した06年新春号でも再増額修正(一転増益を予想)を独自に行った。根拠は、ここ数年の経営改善策によってコスト管理が一段と徹底されてきたことに加え、安全トラブルが相次いだ日本航空からの国内線旅客シフトで少なくとも年商50億円程度が上積みされていること。懸念材料があるとすれば、ドル収入よりもドル支出(機材や燃油調達)が上回るため、最近の円安の悪影響がありうるが、これもヘッジが進んでいるため今期中の影響はそれほど大きくない。
 一方、日本航空は安全トラブルで国内線旅客が逃げ出したことに加え、予定していた退職年金制度の改革が先送りになったことから、必死のコスト削減努力も及ばず、通期赤字予想に転落。ブリティッシュエアウエイズやアメリカン航空なども所属する国際旅客アライアンス「ワンワールド」への参加を遅ればせながら決め、旧JAL時代以来、初めてとなる賃金カットにも踏み切るが、黒字化の方向性が見えにくい。新興エアラインの旗手・スカイマーク エアラインズ<9204.東証マザーズ>も、既存の国内4路線のうち、羽田−福岡線を除く3路線の搭乗率が想定どおりには伸びず、通期赤字予想への減額修正を余儀なくされた。同社は12月初めに開業以来初となる飛行中のエンジン大破損トラブルを起こし、安全面でも日本航空の二の舞を演じかねない懸念もある。
 以上の上場3社のうち、足元は堅調とはいえ、全日空も来期の『四季報』予想は燃油高騰と円安デメリットの通期化で現時点では営業減益を見込んでいる。空運業の天気模様は、総じて引き続き「雨」となりそうだ。
【大滝俊一記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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