部下には権限委譲、上司は上の役割を狙う--『35歳からの「脱・頑張り」仕事術』を書いた山本真司氏(立命館大学経営大学院客員教授、経営コンサルタント)に聞く
──「ネアカ評価」というのもあります。
彼らとの会話はとにかく明るくし、プライドも守ってあげる。他人のいる前では悪口を言わず、怒ることもしない。そういったことに気をつけるようにしたら、心を開き、盛んに話してくれるようになった。若い人は、一皮むくと全然草食的でなくて、猛獣的だったりする。
──権限委譲は、マネジャーにとって諸刃の剣になりませんか。
会社が右肩上がりの時代には、部下がいかに追い上げてきても自分のポストはどこかにあった。低成長の時代では、権限委譲で部下が成長してくると、プライドの高い上司には、こいつに負けたらやばい、という意識になる人もいる。しかし、その雰囲気は以心伝心で部下にもわかるので、熱意がしぼむ。
限委譲して「領土」を割譲する場合、上司は同時に、もう一つ上の役割を狙う形で自分の居場所を求めることだ。もし自分も成長してやるぞという意識を持てないならば、往々にして逆効果になる。
──部下も自分も成長する?
部下に権限委譲をすることで、時たま遭遇してしまうことに、仕事の品質自体が落ちる見込み違いがある。能力のない部下に委譲をすると、結果としてそうなる。しかし、権限委譲をすることで成長する部下は多い。人を見る目が問われるが、互いに成長する「倒れない権限委譲」になれば、その後の仕事はスムーズになるし、お互い次のプロジェクトも一緒にやりたくなるものだ。
──ご自身は「島田タイム」を実行されているとか。
私が1日20時間ぐらい働いていた時期、だんだん視野が狭窄(きょうさく)になっていった。そのとき、当時の先輩社員の島田さんから、自席にいながら手足を動かさず、何の資料も読まず、パソコンも畳んで、ボーッとする時間を持てとアドバイスされた。それを週1回半日、自分自身と対話する時間と考え、島田タイムと名付けて、今も実行している。その時間に物事の時間軸を長く取り、考える範囲を広く深く取って、沈思黙考する。その時間づくりにも権限委譲は欠かせない。
(聞き手:塚田紀史 撮影:鈴木紳平 =週刊東洋経済2011年6月4日号)
やまもと・しんじ
1958年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業、東京銀行入行。シカゴ大学経営大学院にてMBA取得。ボストン・コンサルティング・グループ東京事務所、A.T.カーニーでマネージング・ディレクターとして極東アジア共同代表、ベイン・アンド・カンパニー東京事務
所代表パートナーなどを経る。
『35歳からの「脱・頑張り」仕事術』 PHPビジネス新書 861円 251ページ
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら