部下には権限委譲、上司は上の役割を狙う--『35歳からの「脱・頑張り」仕事術』を書いた山本真司氏(立命館大学経営大学院客員教授、経営コンサルタント)に聞く
「今ミドルは、クライシスにある」という。数の多い上の世代に押し潰されそうになりながら、少ない部下で大きな成果を上げることを求められる。中堅層はどう生き抜いていったらいいのか。
──タイトルにある35歳といえば、会社ではバリバリの中堅のはずです。
35歳前後の人は大いに悩んでいる。上司といえば40代半ばを中心にバブル入社組。自分は就職氷河期経験者の団塊ジュニアで、少人数の部下とチームを組む。ぐっと下を見れば、このところの新入社員層はまずまずの人数がいる。この超いびつな構造の年齢ピラミッドの中で、稼ぎ頭としての期待をかけられている。
就職氷河期経験者であるだけに、自分の生き残りに関心が強くて、同世代の動きについても気にする。だが、社内での仕事の責任と範囲が広がっている割に、リーダーとして機能する修練は積んでいない。少ない人数で稼ぎを出さなければならない分、自らのスキルよりもむしろ、組織をどう動かすかに関心がある。
──本にある「自動的に仕事が回る仕組み」の構築が急がれる……。
たとえば3カ月でこなすべき仕事があったとする。まずリーダーの初速が大事だ。最初の1~2週間に馬車馬のように働く。その期間にこれが成果だ、答えだと一応メドをつける。コンサルタント風にいえば、「仮説」を得ることになる。そして、それが決まったら、あとは品質と安全に徹して、仕事は部下に任せてしまい、直接には手を出さない。
──初速が大事ですか。
仮説といえるほど格好のいいものでなくていい。もし答えが容易に出ないと思えたら、その対象業界のことをよく知っている人たちに話を聞き回ることだ。ほかの人の頭を借用し、かつ勉強しまくって、こうだろうと決め付ける。それでもいい。
リーダーが自分で答えを持っていないと、漠たる資料集めから始まってなかなか事が進まない。部下に問いかけるにしても、仮説がないと踏み込んだ応答はできない。実は、仮説ができたらもう8割方は事が進んだも同然で、仕事の進行ががぜん楽になる。