なぜ王室は世界中で愛され続けるのか?--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト


ただし、右派のポピュリストはそうした王室に対し敵意を抱く。オランダの右派ポピュリストの指導者ヘルト・ウィルダースは、ベアトリクス女王を左派であるとか、エリート主義者であるとか、あるいは多文化主義者であると非難している。

彼はオランダを自分たちの手に取り戻し、移民(特にイスラム教徒)を排除し、(意味しているところは不明だが)オランダを再び“ダッチ”にすると約束している。ベアトリクス女王は国民を人種や宗教で差別することを拒否し、寛容と相互理解を訴えている。それが彼には、外国人を甘やかし、イスラム教徒と融和を図っていると見えるのだろう。

ヨーロッパのほかの王室と同じように、オランダの王室の起源はあいまいである。王や女王が国家を代表する人物として登場してきたのは、歴史的には比較的最近のことだ。

王室に対する忠誠心が長く続いている理由は、人種的国家主義の偏狭な考えを超越した王室の伝統に求められるのかもしれない。ヨーロッパでは人種と文化の融合が進んでいる。われわれに残された唯一の道は、共存する方法を学ぶことだ。もし王室が国民にそれを教えることができたとすれば、王室に対してもう一度喝采を送るべきだろう。

Ian Buruma
1951年オランダ生まれ。70~75年にライデン大学で中国文学を、75~77年に日本大学芸術学部で日本映画を学ぶ。2003年より米バード大学教授。著書は『反西洋思想』(新潮新書)、『近代日本の誕生』(クロノス選書)など多数。

(週刊東洋経済2011年5月28日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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