なぜ王室は世界中で愛され続けるのか?--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト

独裁的ではない立憲君主制は、その欠点を補う特長を持っているのだろうか。民主主義の時代において、出生だけが拠り所の人物に特別な敬意を払うのは理性的とはいえない。新しい皇太子妃が中産階級から選ばれたという理由だけで、われわれは英国などの君主制を今まで以上に称賛し、愛するようになるのだろうか。

君主制は国民を幼児化させる効果を持っている。分別のある大人が、王族が差し出した手に触れる特権を与えられたとき、普通では考えられないような笑みを浮かべて卑屈になる姿を何度見てきたことか。英国王室の結婚式のとき、人々は子どもが夢見るような“おとぎ話”の結婚式に心を奪われたのである。

エリザベス二世の威厳はイタリアのシルヴィオ・ベルルスコーニ首相や歌手のマドンナ、サッカー選手のクリスチアーノ・ロナルドの軽薄さよりも好まれているかもしれない。だが実際には、英国の王室は芸能人やスポーツ選手の最も低俗な部分を取り入れることで自らを改革してきたのである。

王室と世俗的な有名人の世界とは重なっていることが多い。たとえば、サッカー選手のデビッド・ベッカムと、歌手である妻のヴィクトリアは、今回の結婚式の特別ゲストに名を連ねていた。また、英国には傑出した音楽家が多数いるにもかかわらず、宮廷のお気に入りは、エルトン・ジョンである。

幼児化かどうかは別にして、人間には、王族や著名人の人生の中に喜びを見いだそうとする傾向がある。こうした人の持つあこがれを無駄だと決めつけると、大事なことを見落としてしまう。すなわち、キラキラ輝く夢の世界こそ多くの人が見たいと思っている世界なのである。

しかし、こうした願望には“暗い面”もある。それはアイドルがゴシップ誌の餌食になり離婚訴訟などで苦しむ姿を見たい、という願望だ。これは人々の称賛の裏側にある復讐心である。アイドルに対する称賛は、彼らの没落を楽しむことでバランスが取られているに違いない。

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