JR西の新型特急やくも「乗客を寝かせない」工夫 2024年春以降運行開始、デザインで集客なるか

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また、フリースペースやユーティリティスペースも設置した。「小さい子供がぐずっても逃げ場がない。ぜひ余白となるスペースを作ってあげたい」と川西氏が設置の狙いを説明する。

技術面でも工夫が施されている。岡山―出雲市間はカーブが多いため、従来の381系でカーブ区間において車体を傾けることで速度向上を可能とする「自然振り子式」が採用されていた。しかし、この方式は、カーブに差し掛かり遠心力が働き始めたタイミングで車体を傾斜させるため、乗り物酔いしやすいとされる。

そこで、JR西日本は鉄道総研や川崎車両と共同で新たに「車上型の制御付き自然振り子方式」を開発し、273系に搭載した。走行データとマップデータを照合し、正確な現在位置情報をもとに、カーブに差し掛かる前から新型装置が作動し車体を傾斜させることで、より自然な乗り心地を実現。「乗り物酔いしにくい車両になっている」と、JR西日本の担当者が胸を張る。天井までの高さが短いのも床下に振り子装置を組み込んでいるためだ。

273系の台車
273系の台車(撮影:ヒラオカスタジオ)

「すぐ寝てしまう乗客」いなくなる?

JR西日本の関谷賢二車両部長は「山陰や伯備線エリアのシンボルとして、多くの人に長く愛される車両になってほしい」と話す。この車両は11編成が製造される。今後、試運転を経て来年の春以降に順次導入され、現行の381系から置き換える。

273系のデザインを手がけた川西康之氏(中央)ら(撮影:ヒラオカスタジオ)

はたして、目下のライバルであるスーパーはくと、高速バス、航空機から乗客をどこまで奪えるか。乗客の数だけでなく、満足度も重要だ。運行開始したら、ぜひ乗車して車内の様子を見てみたい。乗ったとたんに寝てしまう乗客がいなければ、川西氏の狙いが的中したといえる。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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