イスラエルの歴史家が予見「ハマス紛争」次の展開 1948年以降で最大の危機、和平の機会はあるか?

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ノヴァル・ユラ・ハラリ
イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏(写真:本人提供)
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織「ハマス」は10月7日、イスラエルへの大規模な奇襲攻撃を仕掛けて以来、激しい軍事衝突が続いている。はたして和平は可能なのか。『サピエンス全史』著者でイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏(ヘブライ大学教授)の寄稿文を掲載する。

政治はしばしば科学実験のように行われる

イスラエルはつい先日、建国以来最悪の日を経験した。1956年のシナイ作戦(訳注:第2次中東戦争)と1967年の6日間戦争(訳注:第3次中東戦争)と2006年の第2次レバノン戦争で失った民間人と兵士の合計を上回る数のイスラエルの一般市民が、たった1日で虐殺されたのだ。イスラム原理主義組織ハマスに占領された地域からのニュースと画像には身の毛がよだつ。私自身の友人や親族の多くも、言語に絶する残虐行為の被害に遭った。これは、今やパレスティナの人々もまた、計り知れぬ危険に直面していることを意味する。中東で最強の国であるイスラエルが、痛みと恐れと怒りで青ざめているのだから。パレスティナの人々の目に現状がどう映っているか、私にはわからないし、それについて語る道徳的権限もない。だが、イスラエルがこの上ない痛みを覚えている今、フェンスのイスラエル側からは、状況がどのように見えるかに関して、警告を発したい。

政治はしばしば、科学実験のように行われる。膨大な数の人を対象にし、倫理的な限度もほとんどない。福祉予算を増やしたり、ポピュリズム(大衆迎合主義)の大統領を選出したり、和平を申し入れたりするなど、何かを試し、結果を見届け、さらにその路線で進むことにしたり、あるいは方針を変え、何か別のことを試したりする。イスラエルとパレスティナの紛争も、そのように試行錯誤を重ねながら、数十年にわたって展開してきた。

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