すでに起こったことは、取り消しにはできない。死者を生き返らせることは不可能だし、個人的なトラウマも完全に癒えることはけっしてないだろう。だが、これ以上の事態の悪化は防がなければならない。現在この地域の勢力の多くは、無責任な宗教的狂信者が率いている。したがって、外部の勢力が介入して、この紛争を鎮静化させる必要がある。和平を望む人は誰であれ、ハマスの残虐行為を断固非難し、人質全員をただちに無条件解放するようハマスに圧力をかけ、ヒズボラとイランが介入するのを思いとどまらせるのに協力しなければならない。そうすれば、イスラエルの人々は一息ついて考え、かすかな希望を抱く余裕を得られるだろう。
ガザ地区を非武装化すべき
さらに、アメリカ合衆国とEU(欧州連合)からサウジアラビアとパレスティナ自治政府に及ぶ有志連合を結成して、ガザ地区の支配権をハマスから取り去り、この地区を再建すると同時に、ハマスを完全に武装解除し、ガザ地区を非武装化するべきだ。
こうした措置が実行される可能性はわずかしかない。だが、今回の戦慄の事態の後、イスラエル人のほとんどは、それが実現しないかぎり、とうてい生きていけないと考えているのだ。
(訳・柴田裕之氏)
ユヴァル・ノア・ハラリ イスラエルの歴史学者、哲学者。ヘブライ大学教授。著書『サピエンス全史』『ホモ・デウス』、近著に『人類の物語 Unstoppable Us』シリーズなど(いずれも河出書房新社刊)。
*本寄稿文の英語版は、2023年10月12日、英ガーディアン紙に掲載された。
Copyright Guardian News & Media Ltd 2023(本寄稿文は、河出書房新社が日本語版権を取得しています)
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