でも、僕が特別かと言うとそうでもなくて、うちは出戻りが多いんです。背景にあるのは、クリエイター人材循環の考え方。クリエイターの支援事業からスタートした会社なので、柔軟な働き方をするクリエイターたちと日々接しているんです。だから、辞めたからといって、組織を離れるからといって、関係が途切れるというわけではないんです」
転職がもたらした多くの学び
思い描いていたキャリアとはならなかったが、それでも転職は青木さんに多くの学びをもたらした。ある意味、「異文化」の環境に身を置いたことが、想像以上の効能を持っていたのだ。
「転職先はエンジニア社員が多い会社だったので、目標設定の方法やタスク管理、プロジェクト管理の方法、リリースまでのサイクルの回し方など、どれも参考になることばかりでした。営業文化がもともと強いC&R社では、電話での会話が当たり前だったのが、すべてSlackだったり。小さなことに思えるんですけど、そうやってエンジニアたちと密に働くことでしか見えてこないことってあるんですよね。
アジャイル組織を肌で体感することができたのも、自分にとっては非常に有益でした。どれもC&R社にはないことばかりなので、海外に留学しているような新鮮さで。僕自身、アウトプットにもいい変化がありましたね。
また、経営的な意味合いでは、費用対効果をより意識するようになりました。お恥ずかしいことながら、スタートアップに入って窮地を経験したことによって、それまでのコスト感覚から変化がありました。最初からそのくらい意識しておかないといけなかったんですけどね(苦笑)。
とにかく、コロナ禍を経験したのは大きかったです。極力まで費用を圧縮して、低コストでどれだけインパクトのあるものを考えられるか。相当、鍛えられたと思います」
とはいえ、C&R社へ出戻ることについては、自分の中で逡巡もあった。
「これから会社が大きく変わっていく、自分自身に任せてもらうことも増えていくタイミングでの転職だったので、自分の中では”裏切ってしまった”感が強くありました。だから、再度C&R社に入社が決まったときは、過去の自分の働きぶりが評価されたようで、喜びとなりました。そうそう、全体朝礼で入社紹介をされたとき、社長がニヤッと笑ったんですよね。それがすごく安心しました」
紆余曲折あった30代だったが、今、仕事は充実しているという。
「出戻りならではの仕事のやりやすさがあると感じています。特に、自分は3年ほどで戻ってきたので、入社翌日からスムーズに仕事を再開することができました。当時の同僚や仲間がマネジメントラインに上がっているので、そういった点でもやりやすいですね。今後、辞める可能性ですか……自分から辞めることはないと思います。もしクビになるようなことがあれば、わからないですが(笑)」
人生は予想がつかない。正しいように思えた決断でも、運やタイミングによっては裏目に出ることもある。だからこそ、もし窮地に陥ることがあったとしても、青木さんとC&R社のような関係性をもつことができていれば、これほど心強いことはないのではないか。そんなことを感じた取材であった。
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