アクセンチュアvs.電通、「異業種バトル」の第二幕 「コンサル・広告の雄」が互いの本拠地に攻勢

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その点でシグナルは、SNSなどによって潜在市場を掘り起こす“川下の企画力”に長けている。例えば食品メーカーから請け負った豆乳のPR案件では、SNSの投稿などで「豆乳を凍らせる」食べ方を訴求。斬新なアレンジが話題を呼び、“バズり”を巻き起こした。

アクセンチュアのオペレーションズ コンサルティング本部、大塚健史マネジング・ディレクター
アクセンチュアの大塚氏は「広告以外で認知を獲得する機能が弱かった」と振り返る(撮影:今井康一)

今後はこうしたシグナルのノウハウを取り込み、マーケティングの戦略部門・アクセンチュア ソングとも連携して、戦略から“バズらせ”まで一気通貫で提供する力を磨く。

アクセンチュアの大塚氏は「これまで、広告やアーンドメディア(口コミなど)といったマーケティングの成果は換算しにくかった。これをすべて定量化し、見える化していきたい」と、データに強いコンサル会社ならではのビジョンを語る。

コンサル軸に事業領域を広げる電通

「もちろん、(電通グループの事業に)あの買収は関係してくる」

アクセンチュアのシグナル買収に対し、危機感を隠さないのが電通グループの関係者だ。国内の4マス(テレビ・新聞・雑誌・ラジオ)広告からの収入が漸減する中、電通グループは世界のエージェンシー売上高で7位にとどまり、アクセンチュアの後塵を拝する。

そこで電通グループは近年、アクセンチュアとは対照的に、コンサルを軸とした非広告領域へ事業を拡張している。2021年、著名なコンサルタントの堀紘一氏が創業した戦略コンサルのドリームインキュベータに20%超出資し、2022年5月には新規事業創出に強いイグニション・ポイントを買収。海外でもコンサル事業を推し進めている。

あるマーケティング企業の幹部は「アクセンチュアは戦略性やビッグデータを用いた分析力、電通は『電通ブランド』やタレントのキャスティング力と、強みが異なる。地域プロモーションなどの大型案件では、アクセンチュア・電通と同時にぶつかることもある」と明かす。

前出とは別の電通グループ関係者も、「最近の競合意識はアクセンチュアに向けられていて、博報堂などへの意識は薄い」と話す。

国内のコンサルシフトのカギを握るのが、2016年にデジタルマーケティング専門会社として設立した子会社・電通デジタルだ。同社はデジタル広告のイメージが強いが、川上のDXコンサルなども展開しているため、川上から川下までソリューションを提供する「総合デジタルファーム」としてリブランディングを図る。

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