うつ病の男性が復職できなかった「本当の理由」 背後には「過去のトラウマ」があるかもしれない

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・だれかが言い争いをしているとき

だれかが言い争っていると、いてもたってもいられなくなって、すぐにその場から離れたくなってしまうという方もいます。

反射的に仲裁を買って出てしまったり、場が険悪にならないように疲れるほど周りに気を遣ってしまったり。そうしないと落ち着かないのです。こうしたケースの背景にもトラウマが隠れていることが少なくありません。

たとえば、小さい頃に両親が激しく言い争っていたときの恐怖がトラウマ化し、身体に記憶されているといったケースです。

言い争いや険悪な雰囲気がトリガーとなり、身体的な感覚が再現されて、いてもたってもいられなくなる。そして、その状況を解消する行動を取りたくなるのです。

トラウマは想像よりかなり身近なもの

子どもにとって、両親がお互いを、つまり「大切な人が大切な人を攻撃している」状況は、受け止めがたい大きな衝撃になります。

それが、たとえ暴力等を伴わないものであったとしても、です。生存レベルの危機といっても過言ではありません。

・車を運転しているとき

車の運転がトラウマ化する例も多くあります。僕がお話を聞いた中では、車を運転するとき、一般道を運転していても何も問題ないのに、高速道路に上がると胸が苦しくなってしまうという方がいました。

詳しく話を聞いてみると、その方は小さいお子さんを2人家に寝かせて残したまま、急遽旦那さんを空港まで車で送らなければいけなくなったそうです。

『がんばることをやめられない コントロールできない感情と「トラウマ」の関係』(KADOKAWA)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

「子どもたちが起きたときに私がいなかったらパニックになってしまう」と急いで帰ろうとしていたのですが、慣れない首都高の分岐を何度も間違えてしまい、気が気でなかったそうです。家に帰ったとき、案の定お子さんがパニックになって泣きながら家の外まで探しにきていたのを、近所の人が保護してくれていたそうで、この出来事は彼女にとってとても大きな傷つきとなりました。

このように、トラウマは想像よりかなり身近なものです。ご紹介したような体験によるものだけではなく、難しい人間関係、治りにくい心の病気、世の中のありとあらゆる困難な事例の背景には、ほぼ確実にトラウマがあると考えていいと思っています。すべての人が何らかのトラウマ反応を日常的に目撃したり体験したりしながら生きているといっても過言ではないでしょう。

「生命を脅かされるような出来事でなければトラウマとは呼べない」というのはとてもよくある誤解なのです。

鈴木 裕介 内科医・心療内科医

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すずき ゆうすけ / Yusuke Suzuki

2008年高知大学卒。内科医として高知県内の病院に勤務後、一般社団法人高知医療再生機構にて医療広報や若手医療職のメンタルヘルス支援などに従事。2015年よりハイズに参画、コンサルタントとして経営視点から医療現場の環境改善に従事。2018年「セーブポイント(安心の拠点)」をコンセプトとした秋葉原saveクリニックを高知時代の仲間と共に開業、院長に就任。また、研修医時代の近親者の自死をきっかけとし、ライフワークとしてメンタルヘルスに取り組み、産業医活動や講演、SNSでの情報発信を積極的に行っている。

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