日テレ新会社は「ネットとテレビの接着剤だ」 独占!HAROiD社長がすべてを語った

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もっとも、JoinTVから発展、別会社として仕立て直したという経緯から、本当に他のテレビ局が本当にHAROiDと協業を、どこまで本気でできるのか?と訝しむ声もあるはずだ

しかし、安藤社長は「資本関係のない局も含めて話をすでに始めています。実はJoinTVの時代から、他局との協業については議題に上っていました。しかし企画段階の番組に関して、いくら制作や編成に携わらない部署といっても、日本テレビが関わることは他局にとって抵抗感があります。今回は別会社として設立し、パートナーからの出資も受け付けることで、その点をクリアできる」と自信を見せる。

つまり、HAROiDは日本テレビからスピンアウトした、テレビ局向けのネット連動番組を専門とする技術支援や企画立案を提供するITカンパニーということなのだろうか?と率直に、同社の本質について伺ってみた。

「初期メンバーの大多数はエンジニアで、テレビ局だけでなく、ネット映像配信企業に対しても、開発サポートや各種のSDKを提供して、スマートテレビ時代のコンテンツ制作を支援していきます。そうした意味では仰るとおり、一種のITカンパニーです。」

「しかし、ITカンパニーとして優れているからといって、テレビ番組と連動する優れたウェブサービスやアプリを開発できるわけではありません。よし愉しい番組、新たな広告価値といった、具体的な価値を創造するには技術だけでは足りません。我々の強みは、テレビを理解し、広告の仕組みや広告主が求める価値を把握し、視聴者にとっての娯楽へと繋げるノウハウがあることです。これまでも、技術的な解決策はたくさんありましたが、テレビ番組制作やテレビ局の広告モデルなどとの親和性が決定的に欠けていました。我々は、そこを補完することで日本の放送事業全体を変えていきたいのです」

「アンテナが繋がっていないテレビ」の時代

自信の背景にあるのは、ゆるやかに進む放送事業の衰退がある。いまだ他メディアに比べ大きな影響力とリーチの幅を持つテレビ放送だが、その存在感を保つためにはネットの活用が不可欠になるためだ。

「2020年には東京オリンピックがあり、そこに向けて様々な投資が行われるでしょう。日本中が変化していく中で、自分たち(テレビ放送局)はオリンピックに向け何ができるのかを考えました。ひとつにはソーシャル視聴という切り口がありますが、2020年と言えば5年先の事です。では5年後に、世の中はどこまで変化するでしょう?」

「少し前まで、テレビをインターネットに接続している人は20%以下と言われていました。しかし今後は、サービスの充実もあってインターネットにつながらないテレビはほとんど存在感がありません。ネットへの接続率が100%近く、ほとんどはネットコンテンツばかりという世の中になるかかもしれないですね。むしろ放送がほとんど観られなくなり、”アンテナ接続率の低下”もあるかもしれません。タイムシフトやプレイスシフトといった考え方を進めるためにも、ネットでの配信は増えていく方向だと思います。そんなネットでテレビを観る、楽しむのが当たり前という状況の中で、視聴者、テレビ局、テレビ制作者といった、テレビのエコシステム全体を取り巻く人たちに対して、もっとも優れたプラットフォーム、フレームワークを提供していきます。期待しておいて下さい」

今から5年前、まだ多くの人はインターネットを通じてあらゆる映像配信が行われるとは思ってもいなかった。それが今年はインターネット放送が当たり前になるどころか、4Kのインターネット放送まで始まっている。

では今から5年後、テレビ受像機にアンテナは接続されているのか?あるいは必要がなくなっているのか。そしてネットにつながっていることが本当に当たり前になった時に向けてHAROiDはどのような製品を作り上げるのだろうか?新しい取り組みとして他局は本当に支援するのだろうか。その動き次第では、日本のテレビ事業を大きく変えていく存在に、本当になっていくのかもしれない。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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