パナソニック「トヨタ流カイゼン」で効率爆上がり 特命チームの「伝承師」が生産性向上を後押し
現場レベルのカイゼン活動は、経営レベルでの効率アップとも密接に関係している。
楠見社長は就任から2年間を競争力を高める期間として設定。事業部門ごとに「選択と集中」を進めるよう指示してきた。2022年に持ち株会社制に移行し、権限の委譲と収益への責任を明確にしたのもその一環だ。
持ち株会社への移行後は、事業会社ごとにPL(損益計算書)の開示をすすめ、今年度からは投じた資金に対してどれだけ利益を生み出せたかを示すROIC(投下資本利益率)の開示も始めた。
上図のとおり、実績に加えて2024年度の目標も設定されており、事業会社ごとに効率アップへの責任が明確になっている。
例えば、パナソニックコネクトは2024年度までに生産性向上で固定費率を2022年度比で2%削減する。パナソニックオートモーティブシステムズでは、AI(人工知能)を活用して生産性2倍を達成した敦賀工場の事例を横展開していくことで、生産性を上げていくという。
レッツノートでも細かなカイゼン
パナソニックHDの事業分野は多岐にわたる。そのため、それぞれの事業会社が目標達成を目指すうえで、グループ全社一律で横展開しないといけない具体的な技術やノウハウは少ない。
一方で、生産性を上げるための「思想と手法」には抽象的な部分も多く、各社で共通する部分がある。思想と手法を伝播しグループ全体の横串を担うのが伝承師の役割というわけだ。
伝承師が音頭を取って進める1つひとつのカイゼンは、どれも「そんなことが」と言いたくなるほどささいな工夫ばかりだ。
例えば、レッツノートの裏側に製造番号などが書かれたシールを貼り付ける作業。従来はシールの台紙を1枚ずつはさみで切り離して筐体に貼り付けており、台紙を切る作業のために余計な時間がかかっていた。
そこでシールの台紙にあらかじめ切れ込みを入れ、はさみを使わずに手で引っ張るだけで台紙を1枚分ずつ切り離せるようにした。これで約2秒作業時間が短縮されたという。
こうしたカイゼンを積み重ねたことで、1人の従業員が1時間で作れるレッツノートの台数は、2023年8月時点で1年前の0.88台から1.41台に増加した。生産性にして約1.6倍の大幅改善だ。当面の目標である「生産性倍増」もすでに視野に入っているという。
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