日本だけじゃない!中国で拡大する「ペット市場」 消費の牽引役は「孤独(おひとりさま)」層

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前述の「2021年中国非婚主義白書」によると、非婚者の約81%は月収が5000元以上で、経済的な独立性が比較的高い傾向があります。そのため、仕事もプライベートも一人で頑張る分、自分へのご褒美としての消費意欲は高く、購買力もあります。

急成長する「ペット消費」

また、特に非婚あるいは未婚の人の中で、パートナーのような存在となる相手を求める需要が高まっています。ペットに愛情を注ぐ人が増え、近年のペットブームの一因となり、ペット消費関連市場の成長を後押ししているのです。

2019年11月11日の「独身の日」キャンペーンでは、猫用フードの売上高が初めて粉ミルクを超えたという衝撃的な出来事がありました。iResearch社は、猫と犬を中心とする中国のペット市場規模が、2017年の1340億元から2022年には約5000億元にまで増加し、さらに2025年には8000億元を超えると予測しています。

一方では、SNSを通じてペットの写真や動画を公開し、他の飼い主との交流を図ろうとする人も少なくありません。孤独消費の一種でありながら、ペット消費はこのような社交としての特色も帯びています。

ペットの飼い主の年齢層も、「空巣青年」をはじめとする単身の若者人口の増加によって変化が見られています。2016年には、飼い主に占める「80後(1980年代生まれ)」と「90後(1990年代生まれ)」の割合はそれぞれ48%と17%だったのですが、2018年にはそれぞれ32%と43%に変わったのです。

「90後」の割合が大幅に上昇しており、ペット消費の主役も若年化していることがわかります。若者の代名詞ともなった「鏟屎官(チャンシグァン、ペットを飼う人)」が流行った理由はここにあります。

ペット市場の潜在的ニーズや成長性から、関連ビジネスへの参入を試みる企業が増え続けています。ベンチャーキャピタルから資金を調達し、ビジネスを拡大させる企業があれば、設立数年で上場する企業もあります。

そんな中、ペット関連のサービスは多様化しています。日本では既に普及していますが、中国では、休暇期間に帰省や旅行をする飼い主の代わりにペットの面倒を見るペットシッターサービスが普及し始めています。春節期間に特にニーズが高いのですが、副業として引き受ける若い人も多くなっています。

若い人だけでなく、子どもや高齢者がいる家庭でペットを家族のメンバーとして迎えるケースも増加し、ペットに関連するモノ・サービスがますます増えていくでしょう。

趙 瑋琳 伊藤忠総研 産業調査センター 主任研究員

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チョウ イーリン / Weilin Zhao

中国遼寧省出身。2002年に来日。2008年東京工業大学大学院社会理工学研究科修了、イノベーションの制度論、技術経済学にて博士号取得。早稲田大学商学学術院総合研究所、富士通総研を経て2019年9月より現職。情報通信、デジタルイノベーションと社会・経済への影響、プラットフォーマーとテックベンチャー企業などに関する研究を行っている。論文・執筆・講演多数。著書に『BATHの企業戦略分析―バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイの全容』(日経BP社)。

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