パナ「共働き支援アプリ」を生んだAI専門家の深慮 元グーグル"ヨーキー"が考えるAIと人間の役割

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一例を挙げれば、ユーザーから依頼されたタスクの解決策を考える際のリサーチ作業。生成AIは、人間単独よりもっといいことがどんどん考えられる。AIの発案をコンシェルジュが利用者に提案するアイデアの一部として取り入れられるようにしている。

ほかにも人間がイチからやると手がかかるところにはAIを入れている。たとえば、依頼に対してコンシェルジュが送る提案書の原案を作成させる。利用者への質問事項の洗い出しもそうだ。

ヨハナのアプリ画面
ヨハナで家族旅行の日程を依頼した際のコンシェルジュとのやり取り。AIにはまだ難しい、血の通ったコメントをくれる(画像:アプリのスクリーンショット)

何か商品を探すことを依頼されたとして、ニーズに合ったものを提案するために「好みの色は」「予算は」といった質問をする必要がある。これはある程度聞くべきことが決まっているので、テクノロジーの得意分野だ。

利用者との過去のやり取りの分析にもAIをかけている。

毎週献立の提案をしている利用者がいたら、過去のデータの蓄積で「どんな食材にアレルギーがあるか」「子どもの好き嫌い」「これまでどんなメニューを食べてきたか」、などがよくわかる。

だから「来週うちに親が来るから、ディナーのレシピを提案して」という依頼が来れば、これまでのデータからその家庭に最適化された提案ができる。

ローンウルフからメインストリームへ

――パナソニック入社は2019年。それまではシリコンバレーで長くキャリアを積んできました。

グーグルやアップルで働いてきたこともあり、入社を決めたときには「パナソニックでいいんですか?」と言ってくる人もいた。ただ、他社からも複数声がかかっていた中で「パナソニックでいい」と思って転職したわけでは本当にない。実際に働いてみた感想としても、これだけ幸せで頑張りたいと思う会社はこれまで経験したことがない。

とくに津賀さん(松岡氏を招聘した当時の社長である津賀一宏・現会長)は素晴らしい経営者。社内には才能のある人材が豊富にいる。だから私も会社をどんどん変えてあげたいと思うし、変わってきたところも見えてきた。既存事業に安住せず、新領域もしっかり伸ばしていかなくてはならない、という責任感が伝わってくる。

もっとも入社してからしばらくは、“ローンウルフ(一匹狼)”状態だった。シリコンバレー流の“お手並み拝見”ということなのか。津賀さんとしては、「いきなり会社の中心部に入ったら溺れてしまう」と、あえてアメリカで単独で仕事をさせ、それを外からみんなに見せてよね、という意図があったのだと思う。

それが今は、(松岡氏の方針を)「グループ全体のメインストリームとしてやっていこう」という雰囲気になってきた。当初はパナソニックを冠さない会社(Yohana)の創業者CEOとしてスタートし、2023年からはパナソニックウェルの本部長にも就任した。

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