モサドを出し抜いた「隠密アナログ作戦」の巧妙 世界屈指のイスラエル情報機関が弱点を露呈

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インテリジェンスの世界では、大枠で言えば「良質な情報の収集」・「分析/評価」を経て“インフォメーション”を“インテリジェンス”へと昇華させ、組織の意思決定に寄与する。

このそれぞれの過程で、イスラエル情報機関が過ちを犯した可能性について考察する。

諜報の観点から見る失態の原因

①良質な情報の収集

情報の収集には「OSINT(公開情報からの情報収集)」や「SIGINT(通信傍受など)」「COLLINT(利害関係が同じインテリジェンス機関が協力・連携)」など複数の方法があるが、モサドはこれまで、「HUMINT(人的情報収集)」で名をあげてきた。

一方で、通信傍受やスマートフォンなどのモバイルの盗聴の技術が発達している中で、HUMINTにおける人的情報源ないしは人材そのものが不足し、技術に依存せざるをえない状況があった可能性がある。

アメリカの例ではあるが、1970年代以降、アメリカのインテリジェンス体制は、技術を主体とする体制に重点を移し、「HUMINT」を軽視する傾向にあったと指摘され、同時多発テロ事件の教訓とされている。

このような技術への対抗策はアナログだ。Bloombergは、元アメリカ国家情報副長官のベス・サナー氏が「膨大な量の弾薬搬入を含むこのような大規模な作戦をハマスが隠せたのは、極めて古いやり方がとられたからだ。作戦が電子機器でやり取りされたことはなかったのではないか」と指摘していると報じた。

イスラエル軍のSIGINTを担う8200部隊を例に、ハマス周辺の通信傍受は常に試みられており、ハマスも当然認識したうえで常日頃から警戒している。そこで今回は特にスマートフォンやパソコンなどの使用を禁止し、地下で情報伝達を行うなど徹底して傍受を回避した可能性は十分にある(日本国内の話にはなるが、ロシアの情報機関員も日本人エージェントとコンタクトする際はメールや電話での連絡を避け、接触中も筆談を行うなど極めてアナログな手法をとる)。

イスラエル ハマス モサド 中東
イスラエルに向けて発射されたミサイル(写真:AP/アフロ)
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