太地町イルカ猟、「墨塗りは条例違反」判決の意義 売買文書の"全面非開示"は行政権限の濫用

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ヤブキ氏の情報公開請求に対する太地町教育委員会の対応は、“秘密主義”に徹したものだった。

たとえば、太地町立くじらの博物館および太地町長名による輸出承認申請書(2018年9月20日)では、購入者の名前や仕向け地、販売されたイルカの数量や単価などがことごとく墨塗りされていた。

太地町立くじらの博物館の予算額や収入額、売買されたイルカの種類別の金額などを記した「収入金通知書」(2011年度)も、記載された数字のすべてが墨塗りとなっていた。

びっしりと墨塗りされた太地町教育委員会の行政文書(出所:LIA)

こうした行政挙げての秘密主義を問題視したヤブキ氏の提訴に対して、被告となった太地町教育委員会は、法廷で次のような主張を展開した。

取引価格などが開示された場合には取引業者の営業上の秘密が公になされることになるとしたうえで、「原告の団体は(イルカなど)鯨類の捕獲に対する反対活動を行っており、原告側に情報が開示された場合に取引業者の名誉が侵害され、事業活動に重大な支障が生じるおそれがある」。

地裁判決は太地町側の主張を一蹴

被告側は、「原告によってくじらの博物館において生物虐待が行われているかのように吹聴され、職員による生物の飼育に重大な支障が生じる恐れがある」とも主張した。

しかし、和歌山地裁の裁判官はこのような主張を認めなかった。決文では「売買の単価、数量、金額などの記載内容から、鯨類の捕獲方法やその取引における交渉方法といった取引業者の営業上の秘密が推知されるとは考えがたい」と記された。

原告が鯨類の捕獲、飼育に反対する活動を行い、原告が当該団体の代表者であるからといって「原告について、不当に取引業者の名誉を侵害し、その事業活動に重大な支障を及ぼす行動に出ることを裏付けるおそれが客観的に認められるとまでは言いがたい」とも言及した。

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