新NISA見据えて仕込む「10倍株」今から見つける技 数字やデータだけではない「いちばん大切なこと」

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エミン先生:ところがね、これまで10倍になった企業の共通点を探してみたところ、オーナー社長だったケースが多いんだ。思い切った決断や長期的な視点に立った経営ができるし、株価が伸びれば自分の資産が大きく増えるから、雇われ経営者に比べてモチベーションも高い。

カルタくん:10倍株になるためには、イケイケの社長のほうが向いているのですね。正解はAか。業績だけでなく、投資する企業の社長まで調べないといけないとなると、10倍株を探すのは大変だ。

エミン先生:それじゃあ、カルタくんには特別に、私がこれまでの経験や分析で見つけた、10倍株の条件を教えてあげましょう。

カルタくん:やったあ!

解説:10倍株に共通する4つの条件

私たちが長年にわたり、10倍株の共通点を分析したところ、大きく4つありました。

(1)過去4年間の売上成長率が年20%以上

まずは企業の成長の源泉である売上高が着実に伸びているのが条件です。売上高が伸びていれば、それは競合他社との競争に勝ってマーケットシェアが拡大しています。または新製品で新たな市場を開拓しているかもしれません。

シェアはそのままでも市場そのものが成長している場合もあります。毎年20%ずつ売上高を伸ばしていれば、4年で倍になるスピードです。

(2)営業利益率が10%以上

これは企業の「稼ぐ力」です。営業利益とは、売上高から原価や人件費などを除いた儲けのこと。これを売上高で割って求めたものが営業利益率です。本業でどの程度の利益を出せているかを確認します。営業利益率は業界によっても異なりますが、10%以上が望ましいです。

(3)上場から5年以内

上場直後は企業がもっとも成長する時期です。上場で集めた資金を、成長分野に投資できるからです。時価総額(株価×発行済株式数)でいえば、1000億円以下が1つの目安。あまり大きすぎると10倍に成長する余地がなくなります。

(4)オーナー企業、または社長が筆頭株主である

そして4つ目の条件がオーナー企業、または社長が筆頭株主であること。大胆な経営判断ができ、企業の成長が自らの資産に直結するので、会社のために働く意欲も高い。子どもや孫の代まで会社を残そうと長期的な目線での経営も期待できます。

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4つの条件をすべてクリアしているのが理想ですが、厳密に満たしている必要はありません。「(1)は満たしているけど、(3)は少しオーバーしているな」というケースもあるでしょう。それぐらいでしたら十分検討に値します。

カルタくんはダイズが条件に当てはまっているかどうかを熱心に調べています。「売上成長率OK、営業利益率ギリギリだけどOK、上場してからちょうど5年目、そしてイケメン若社長が筆頭株主。エミン先生、ダイズは10倍株の条件に当てはまっています!」とカルタくんの声は弾んでいます。ダイズへの期待が高まりますね。

とはいえ、これら4つの条件すべてに当てはまるからといって、株価が上がるとは限りません。あくまでも過去の10倍株から導き出した共通点です。ストーリーが描けるかどうかがいちばん大切なことを忘れないでください。

エミン・ユルマズ エコノミスト、為替ストラテジスト
Emin Yurumazu

トルコ・イスタンブール出身。16歳で国際生物学オリンピックの世界チャンピオンに。1997年に日本に留学。一年後に東京大学理科一類に合格、2004年に東京大学工学部を卒業、2006年に同大学新領域創成科学研究科修士課程を修了後、野村証券に入社。投資銀行部門、機関投資家営業部門に携わった後、2016年に複眼経済塾の取締役・塾頭に就任。著書に『新キャッシュレス時代 日本経済が再び世界をリードする 世界はグロースからクオリティへ 』(コスミック出版)、『コロナ後の世界経済 米中新冷戦と日本経済の復活!』(集英社)など

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