売上至上のビッグモーターが苦境に陥った納得理由 「買いたい」よりも売上を重視したら起きること
もう1つ質問です。あなたのお子様が、受験の塾に通っていたとします。塾の先生が、お子様に言ったとします。
「合格しろ」
と。それは「適切な指示」でしょうか?
あなたとお子様はきっとこう思うでしょう。「もちろん自分たちだって受かりたい。そのための指導をするのが先生の仕事ではないのか?」。
この2つの指示に共通するのは「勝つこと」「合格すること」という「当たり前のゴール」を「達成しろ」という指示になっていることです。この2つの指示は「当たり前のゴール」を確認しているだけですので、意味がありません。せいぜい、「気合いだ!」くらいでしょう。
では最後にもう1つ。営業マネージャーが営業担当者に言ったとします。
「売上を上げろ」と。それは「適切な指示」でしょうか?
これは「勝ってこい」という野球チームの監督の指示、「合格しろ」という塾の先生の言葉同様に、意味がありません。営業担当者はきっとこう思うでしょう。
「もちろん売上を上げたいのはわかっている。そのやり方を考えるのが営業マネージャーの仕事ではないのか?」と。
売上を組織の評価指標として使う、ということは、「当たり前のゴール」を達成しろ、ということです。「勝ってこい」という野球の監督と同じで、意味がないんです。
「いや、営業担当者に売上を上げろ!と言えば営業担当者は頑張るはずだから意味がある」とおっしゃるかもしれません。では伺いますが、営業担当者はどう頑張るのでしょうか? みな売上を上げたいのですから、売上を上げる方法があればとっくに実行しているはずです。
「売上」は重要な経営指標ですし、税務申告もしますから、当然その「管理」はします。
しかし、組織として、売上を評価指標として追いかける(報告し、改善を続ける)ということには、あまり意味がないのです。
売上を評価指標にすることのデメリット
売上を評価指標としてムリヤリ追いかけることには、デメリットもあります。
今年、大きな話題になったビッグモーターの事例がまさにそれです。2023年6月26日付けの「ビッグモーター調査報告書」から引用します。
ビッグモーターは「アット」という『車両修理案件1件あたりの工賃と部品粗利の合計金額』を評価指標(ノルマ)として使っていたわけです。
ここでは「粗利」ですが、実質的には売上と同様の意味でしょう。「売上」「粗利」を評価指標とし、それを追いかけた結果が、ビッグモーターのあの事件です。
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