売上至上のビッグモーターが苦境に陥った納得理由 「買いたい」よりも売上を重視したら起きること

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それをムリヤリに追いかけた結果、「不正」というある意味で最悪の「売上を上げる方法」に手を染めたわけです。

「売上を評価指標にする」ということは、このような事態を招きかねないんです。

「売上」ではなく「買いたい」を追いかけよう!

ではどうすれば良いかというと……

・「売上」ではなく「買いたい」を評価指標として、それを追いかける

ということが「正しい売上の上げ方」です。

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そもそも「売上」とは、お客様がその商品・サービスを「買いたい」と思った「結果」として上がるものです。「買いたい」の「結果」が「売上」なんです。

ビッグモーターは、業績自体は上がっていたわけです。問題は「売上」ではなく、「買いたい」を作らずに「売上」を追いかけてしまった、ということです。

「買いたい」を作るとは、すなわちお客様に「価値」「うれしさ」を提供するということです。マーケティングとは、まさに「買いたい」を作ることなんです。

「買いたい」を作るための指標の例としてわかりやすいのが、このような指標です。「はなの舞」などの居酒屋を展開するチムニーの事例です。

『「客からもらうお礼の言葉の数に比例して売り上げが増えている」。チムニーの和泉学社長は最近、こんな発見をした。このほど全店で客からもらう「ありがとう」と「ごちそうさま」の件数を数え始めたところ、お礼の言葉は1日平均6000件に上った。お礼の数が多い店と少ない店では「売り上げの目標達成率が2.5ポイントも差が付いた」という』(2010/09/27 日経MJ p.19)

つまりは、「ありがとう」とお客様に言われる店は売上目標達成率が高いということです。

居酒屋の基本サービスは「接客」と「料理」です。この2つできちんと価値を出せれば、お客様に「ありがとう」という「お礼の言葉」をいただけます。そのような「価値を提供できている店」は、お客様が来店・再来店されます。すると、

・「ありがとう」と言われた結果として「売上」が上がる

となるわけです。

これが、「売上」ではなく「買いたい」を追いかける、ということです。「売上」を追うことに意味はありません。追いかけるべきはお客様の「買いたい」なんです。すると、結果として「売上」が上がるんです。

ビッグモーターも、「売上」「粗利」ではなく「ありがとう」の数を追いかけていたら……と思わずにはいられません。

佐藤 義典 マーケティング・コンサルタント

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さとう・よしのり / Yoshinori Sato

ストラテジー&タクティクス株式会社代表取締役社長。米国ペンシルバニア大ウォートン校MBA。中小企業診断士。大手通信会社でマーケティング・営業を経験した後、外資系メーカーのブランド責任者、外資系エージェンシーの営業ヘッド、コンサルティングヘッドを歴任。2万人超が購読する無料メルマガ「売れたま! 」の発行者としても活躍中。『図解 実戦マーケティング戦略』(日本能率協会マネジメントセンター)、『ドリルを売るには穴を売れ』(青春出版社)など著書多数。

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