年内の衆院解散は見送りか?「岸田首相の本音」 臨時国会で補正成立後も、経済対策に「一意専心」
そもそも、森山氏は選挙対策委員長だった前通常国会の終盤にも「野党が内閣不信任案を出せば解散の大義になる」などと発言、首相もこれに呼応する姿勢をみせたことで解散風が吹き荒れた経緯がある。このため、今回の森山発言についても政界では「岸田首相と呼吸を合わせての解散煽り発言」(自民幹部)と受け取る向きも少なくない。
一方で、岸田首相の後見役を自認する麻生太郎副総裁は、地方講演で「岸田首相が選挙をするという話は少なくともこの半年間、聞いたことがない。政権は安定しており、政治に対する信頼が揺らいでいると思ったこともない」と早期解散を疑問視してみせた。
これに絡めて与党内では「『早期解散派』と『解散阻止派』の駆け引き」(自民幹部)との指摘もある。岸田派幹部は「解散論が出れば出るほど岸田首相の主導権が強まる」と胸を張る。ただ、国民からみれば、解散権をもてあそんでいるようにもみえるだけに、野党からは「解散をもてあそぶのはいいかげんにしてほしい」(小池晃・共産党書記局長)との批判も相次ぐ。
そもそも、「過去1年間にたびたび吹き荒れた解散風の発生源はいずれも岸田首相サイドだった」(安倍派幹部)との見方もある。「それにより岸田首相の主導権維持戦略が成功してきた」(岸田派幹部)のも事実だ。
「通常国会会期末解散」で自民250超なら無投票再選?
そこで政界関係者が懸命に探るのが「岸田首相の本音」だ。岸田政権にとって「解散する場合の脅威」となるのは日本維新の会の存在だ。今春の統一地方選で大躍進した維新は、「次期衆院選で野党第1党となり、近い将来の自公政権打倒を目指す」(幹部)と公言している。
ただ、中央・地方の所属議員に「政治と金」「パワハラ・セクハラ」などの不祥事が相次ぎ、ここにきて各種世論調査での維新の政党支持率は下落が目立つ。しかも、維新が主導してきた2025年4月からの大阪・関西万博の順調な開催が危ぶまれており、開催1年前の来年4月には万博の延期論も出かねない状況だ。
そうした中、維新の馬場伸幸代表は7月には「立憲民主党は日本には必要ない政党。野党第1党になって、立憲を消滅させる」と言い放ち、衆院各小選挙区で立憲民主と対峙するべく、候補者擁立を進めている。ただ、「野党同士が戦えば、漁夫の利を得るのは自民」(選挙アナリスト)とみられているだけに、「維新の自滅を待つ岸田首相が解散を遅らせるのは当たり前」(自民長老)ともいえる。
臨時国会召集を前に、ほとんどの衆院議員は選挙区での活動に腐心している。この状況について自民選対幹部は「与野党衆院議員がこのまま選挙活動を続ければ、来春には『もう資金がない』との悲鳴が噴き出す」と予測。だからこそ、岸田首相の本音が「次期通常国会での会期末解散・7月総選挙」と読む自民党幹部は「自民が250議席を超えれば9月の総裁選で岸田首相は無投票再選となる」と解説する。
ただ、「今後の内外情勢は極めて流動的で、すべてが岸田首相の思惑通りに進む保証はまったくない」(自民長老)のが実態。このため、岸田首相側近も「これまで岸田首相は、自らの“強運”を信じて政局を動かしてきたが、これからは宰相としての資質・見識が厳しく問われる」との不安を隠さない。
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