中国の「戦争リスク」南シナ海で高まっている背景 フィリピンの「対中強硬策」で緊張は次の局面に
こうした動きに、アジアの多くの国々や、世界的に重要な海上交通路となっている南シナ海での航行の自由の維持を重視するアメリカは懸念を募らせている。さらに、中国の軍事拡張や、中国の海警局と海上民兵の行動が次第に攻撃性を増してきていることも、南シナ海地域における中国の狙いや、国際法と国際規範に中国が従う意思があるのかについて、疑念を広げる要因となっている。
こうした緊張がとりわけ顕著なのがフィリピンで、フィリピンの漁師たちは中国の船に漁業を妨害され、フィリピンは2016年にオランダ・ハーグの国際法廷で自国の排他的経済水域(EEZ)と裁定された地域の石油・ガス探査も妨げられている。
事が起これば日本も巻き込まれる
多くのアナリストは、中国は条約に基づくアメリカの同盟国であるフィリピンに軍事行動を取ることまではしないだろうと考えている。アメリカや同地域におけるほかの同盟国との広範な紛争に巻き込まれるおそれがあるためだ。
アメリカの国防長官ロイド・オースティンは8月、アメリカとの相互防衛条約は「太平洋におけるフィリピンの公船、航空機、沿岸警備隊を含む軍隊に適用され、その範囲には南シナ海も含まれる」と改めて断言した。
「アメリカが南シナ海で中国と交戦状態になった場合、オーストラリアや日本などの国々はこれを傍観しているとは考えられず、何らかの方法で紛争に関与することになるだろう」。シンガポールの国防戦略研究所の上級研究員コリン・コーは、「従って中国にとってこうしたことは、有能な当局者であれば、誰もが考慮すべき事項となる」と指摘する。
シンガポールの元外務次官ビラハリ・カウシカンは、「中国当局はすでに国内で数々の問題に直面しており、アメリカとの対立を引き起こすことで問題をさらに増やしたいとは思っていないだろう」と話した。