アメリカの長期金利が低下するための条件は何か FRBがインフレ沈静化で重要視する指標とは

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FOMC後の2026年までの政策金利見通し(ドットチャートの中央値)を確認していくと、まず2023年末は5.75%と前回から不変であった。追加利上げを支持した12人の参加者は、実際に利上げをするかは別として、インフレ再燃に備え、利上げの余地を残しておきたいと考えていたと思われる。

反対に7人の参加者は現状水準での据え置きを支持した。筆者は、次のFOMC(10月31~11月1日)までに蓄積されるデータが現在の基調とさほど変化しなければ、先の12人のうち、数人が据え置き派に転向することで、全体として据え置き派が多数になるとみている。

たしかに、直近の原油価格上昇は不確定要素である。だが、極端な値動き(例えば指標となるWTI原油先物価格が1バレル=100ドルを突破する)にさえ発展しなければ、次回FOMCまでの約2カ月間、平均時給の増勢が鈍化する下で、FRBが重視するコア・インフレ率は緩やかに低下基調をたどると判断され、利上げ見送りを支持するだろう。

何が足元の長期金利上昇に拍車をかけたのか

今回のFOMCで驚いたのは2024年末の値だった。6月FOMCの段階では4.75%であり、2023年末の予想である5.75%から4回分(1回25bp・ベーシスポイント)の利下げが想定されていた。だが、今回は5.25%へと上方修正され、2回分の利下げとなった。

これはFRBが以前から繰り返してきた(政策金利を)高く・長く(higher for longer)据え置く姿勢そのものであり、来年前半の利下げを見込んでいた筆者を含む市場参加者に、予想の変更を迫るものであった。この部分が長期金利上昇に拍車をかけたのは明らかだ。

さらに、2025年末については4.00%と、2024年末対比で5回分の利下げが想定された。だが、それでも2.5%と推計されている中立金利(インフレを加速も減速もさせない金利水準)を明確に上回る引き締め領域であることに変わりはなく、2026年末ですら3.00%と中立金利に回帰しない形状となった。

この間、物価見通しは2023年がプラス3.3%、2024年がプラス2.5%、2025年がプラス2.2%、2026年がプラス2.0%とされ、2%に収束していく姿が示されたが、FOMC参加者が認識するリスクは上振れ方向に傾斜した状態が続いた。またGDP(国内総生産)成長率は2023年がプラス1.8%、2024年がプラス1.5%、2025~2026年がともにプラス1.8%とされた。前回対比で見ると、2023~2024年の成長率見通しが大幅に引き上げられたのが特徴的だった。

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