「ディズニーとHulu」異例の競合セット売りのなぜ 2カ月経った成果は?今後の取り組みも聞く

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髙谷氏は「数あるサービスにはそれぞれの個性があります。ユーザーの見たいコンテンツは人によって異なり、それを提供するサービスは限られているわけです。

ユーザーは必要、不要なものを明確に分けて、必要な場所に出合いにいきます。利便性と選択肢の多様性がある市場がこの先も続いていくでしょう。そこにいかに応えられるかが、われわれの存在意義です」と力を込める。

小林氏は「市場環境が目まぐるしく移り変わるなか、5年後を見立てることよりも、市場の早い動きに適応できる体制を整えておくことが重要です。ディズニープラスは、われわれが大事にしている質の高いストーリーテリングやブランドをしっかり守る強力な新しい事業部門として、ディズニーのほかのビジネスと連携を取りながらディズニーの魅力的な物語をお客様にお届けし続けるのが基本的な考え方。それを続けていけば、この先の市場がどう変わっても、個性を持ち続ける存在でいることができます」と語った。

ヒットコンテンツの共同制作も?

競合というポジションでありながら、近しい関係性から連携した動きも見せる両サービス。先に述べたとおり、両者は統合の可能性は否定するものの、そんなタッグだからこそ、ユーザーを驚かせ、市場を活性化させるような画期的な新しい取り組みが生まれることも期待される。

小林氏は「実現できたらいいなと思うのは、両社で大きな予算をかけて世の中的な話題になるヒットコンテンツを共同制作すること。さまざまな議論をする段階であり、これからの可能性としては十分あります」と心中を明かす。髙谷氏も「せっかくこういう関係性にあるので、そういう話を積極的にしていかないといけない」と小林氏に同意する。

両サービスの連携による武器の1つは、日本テレビという放送を持つマスメディアがあること。それを活用することで、コンテンツだけでなくイベントやプロモーションにおける幅広い流通設計が可能になる。

配信オリジナルコンテンツのテレビ番組化や劇場映画配給といった流通はすでにはじまっているが、配信独占や先行にとらわれないメディアミックスの進化系はこういった提携から生まれてくるのかもしれない。

そこから社会現象的なヒットが輩出されれば、配信サービスのあり方が未来に向けてまたひとつ変容を遂げることにつながるだろう。

武井 保之 ライター

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たけい・やすゆき / Takei Yasuyuki

日本およびハリウッドの映画シーン、動画配信サービスの動向など映像メディアとコンテンツのトレンドを主に執筆。エンタテインメントビジネスのほか、映画、テレビドラマ、バラエティ、お笑い、音楽などに関するスタッフ、演者への取材・執筆も行う。韓国ドラマ・映画・K-POPなど韓国コンテンツにも注目している。音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク系専門誌などの編集者を経て、フリーランスとして活動中。

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