「母とは二度と会わない」絶縁選んだ娘の辛い半生 助けてくれない祖父と母親に苦しんだ彼女の決断

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母親は人間関係にも苦労していたようです。パート先ではトラブルが多く、近所で騒がしい家があれば「化粧品の瓶を投げ込む」ことも。祖父母が止めると「うるせえんだよ」と大声をあげる母親を、「まるで中高生の子どものようだった」と振り返る柚実さん自身、当時は子どもでした。

戦中生まれの祖父は、学歴コンプレックスが強い人で、家族へのDVやセクハラが日常でした。最も被害を受けたのは、おそらく柚実さんの弟です。弟も母親と同様の傾向があり、勉強や人間関係で苦労していましたが、祖父は「なんでお前はできないのか」と弟を責め、暴力をふるっていました。

友達からよく「カモにされていた」弟

弟が友達からよく「カモにされていた」ことも、忘れられません。

「ゲームセンターに連れて行かれては、有り金を全部はたかされるんです。高校に行ったらDSを騙しとられちゃって。母も高額な着物を二束三文で売ってしまったことがあります。知的なハンディのある人って、本当にカモにされるんですよ。見ていて本当につらい」

弟を見かねて、柚実さんが役所の窓口に相談をしたこともあります。

「私が大学生のとき、弟を療育につなげたいと思って、住んでいた自治体に電話したんです。姉が相談してくるのは珍しかったみたいで、すごく親切にしてくれて。通知表とかいろいろ持ってくるように言われたんですけれど、それは親が行かないといけない。でも、母親は祖父の影響で(障害や療育に)偏見があったから、全然取り合ってくれなくて、結局断念しました。八方ふさがりでした」

祖父の暴力は、弟と母親、祖母に向けられていました。柚実さんだけは「嫁入り前の娘だから」という理由で手をあげられなかったそうですが、その理由にも「すごくムカつくし、モヤモヤした」といいます。

暴力は受けなかったものの、柚実さんも祖父にはいい思い出が皆無です。同居していた頃は「俺にお前の扶養義務はない。お前は居候だ」と言われ続け、数年前に彼女が絶縁を伝えたときには「お前にはこれだけの金がかかった、返せ」と手紙が送られてきたそう。

「でも、祖父のことはもういいんです。話す価値もない。一周まわってどうでもよくなっちゃって、恨んですらいません。祖父はしばらく前に亡くなって、弟が知らせてくれたんですけれど、私は香典だけ送って葬式にも行っていないです。今の状況が一番心地よいですね、『恨むことにエネルギーを使わない』っていうのが」

柚実さんは20代の頃に「毒親や機能不全家族の本」をたくさん読んだことで、「自分のなかでいろいろと折り合いがついたのかもしれない」と話します。本を読むことは「知識を仕入れること」であり、それはつまり「自分一人で考え込まないこと」だったと考えています。

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