インドネシア高速鉄道、「試乗会」で見えた実力 最高時速は350km、「中国式」らしさはある?
ジャカルタ―バンドン高速鉄道の運営主体の正式名称はインドネシア・中国高速鉄道(Kereta Cepat Indonesia Cina)、略してKCICで、その名の通り中国とインドネシアの国営企業の共同出資によって成り立っている。駅に中国の国旗を掲揚したところで問題はないはずだが、試乗客を出迎える駅前にはインドネシア国旗のみがはためいていた。
日本の円借款で建設されたジャカルタMRT(地下鉄)の開業式典でも日本カラーが完全に消されていたが、民活プロジェクトとして中国側に出資させていてもなお、あくまでも中国は出資者の1つにすぎず、それ以上でもそれ以下でもないというインドネシア側の強い意志を感じる。
試乗会の受付は1階の入り口に設置されており、車で乗り付けてくる試乗会参加者も多い。今は一般道からしか駅前に乗り入れできないが、すぐ横を走っている高速道路からそのまま駅前に乗りつけられるようにすれば、好評を博すだろう。
受付を済ませ、エスカレーターを上ると空港のようなX線の手荷物検査がある。その先が待合室になっているが、16両編成対応でホーム3面6線を有するハリム駅ながら案外小さい印象を受けた。ベンチがまだすべて搬入されていないこともあるが、柱の下を中心に弧を描くような形の固定式ベンチが備わっており、ある意味で無駄な空間があるのも理由だろう。無機質な中国式の駅の中にインドネシア的な意匠も取り込んでいる。逆に、明らかに中国式だと思わせるのは青色の巨大な電光掲示板、そして、それに表示されている列車番号がGから始まっていることくらいである。もちろん、これも中国語の表示はない。
鉄道ファンをPRに活用
待機していると、発車の30分前からホームに上がれるとの案内があった。それによると、一般の試乗会参加者は8両編成のうち6・7号車にしか乗車できないようで、ほかの車両はプロジェクト関係者、政府関係者とその家族、また立ち退きに協力した沿線住民、それにインフルエンサーとして乗車するVIP枠だという。中国人の姿はゼロである。先ほどLRTに乗り合わせていた鉄道ファンらはVIP枠での乗車のようだ。
KCICは、鉄道ファンなどを中心としたインフルエンサーを活用している。このような試乗会への招待はもちろん、工事期間中も沿線のファンらに工事風景をドローンなどで撮影することを許可していたほか、テガルアールの車両基地にも彼らを定期的に招き入れ、情報を積極的に拡散させていた。中にはKCIC公式よりもよほど多い登録者数、再生数に成長しているアカウントもある。
また、鉄道ファンに人気の高かった、中国から搬入した東風4型機関車が牽引する工事列車の運転情報も発信していた。レアな工事列車や試運転を、狙ったかの如く週末に走らせたことは注目に値する。9月17日が初日とされている試乗会であるが、実際には前日にも鉄道ファンサークルなどのインフルエンサーが招待されている。何かと秘密主義的に進められる日本のプロジェクトも見習う必要があるのではないか。
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