インドネシア高速鉄道、「試乗会」で見えた実力 最高時速は350km、「中国式」らしさはある?
指定された席に着くと隣も鉄道ファンで、やはり試乗会の応募ページのリンクを事前にもらっていたそうである。それでいて一般試乗客向けの車両が2両しかないのでは、受付が瞬殺で締め切られても不思議ではない。
8両編成の列車の定員は、普通車(プレミアムエコノミー)555人、ファーストクラス28人、VIPクラス14人の計597人。2編成を併結した16両編成による運行も可能である。普通車の車内はまるで日本の新幹線と見紛うかのごとくで、2+3列の配置で回転式リクライニングシートがずらりと並んでいる。可動式の枕を装備しているのがうれしい。座り心地も新幹線と同じと思いきや、より安定感があり、体にしっかりとフィットする印象を受けた。
このCR400AF型は、日本の新幹線E2系を基にした中国の高速列車CRH2型の発展形ともいえるが、扉がプラグドアである点や、先頭・最後尾車両のドアが車体中央にあり、それぞれ運転台側がVIPクラスになっている点などが異なっている。このあたりは、ドイツからの技術供与で造られたCRH3型の流れを汲んでいるとも言える。
揺れも騒音もほぼない車内
列車は定刻通り出発し、みるみるスピードを上げていく。だが、歓声の類はまったくと言っていいほど上がらず、皆、ある意味で冷めている。一般向け試乗会とは言いつつ、知識ゼロの「本当の意味での一般客」は乗っていないのである。
駅を出ると、すぐに高速道路をくぐる1号トンネルに時速160kmで入る。ジャカルタ側唯一のトンネルで、長さは1870m。このエリアはハリム空港の制限空域で、道路をまたぐLRTのさらに上を通すことができないためにトンネルになったと思われる。ちなみに日本案では、ジャカルタ都心部からブカシ付近まで一部区間を除き地下線となっていた。中国案はより経済的なルートを取っていることがわかる。
トンネルを抜けると高速道路の南側を沿うようにして走る。この先、ブカシ付近の12km地点まではカーブが多いため最高速度は時速200kmに抑えられているが、その先はバラスト軌道からスラブ軌道区間となり、300kmにアップする。さらに16km地点から先、パダララン手前の95.5km地点までが350km運転区間である。
揺れも騒音もまったく気にならず、車内は静寂そのものである。高速道路から徐々に南側にそれる形で離れていくと、最初の中間駅であるカラワン駅を最高速度で通過。ハリムからの所要時間は10分足らずである。
ブカシからチカラン、そしてカラワン一帯は、日系企業も多く集まる工業地帯であるほか、大手不動産会社が住宅開発も進めている。とはいえ、カワラン駅周辺は田んぼが広がるだけである。駅の少し手前、進行方向右手の広大な平野の中に、突如高層アパートが林立するエリアが現れるが、これはメイカルタと呼ばれる新興開発地区だ。一部入居は始まっているものの大半は未完成で、中国のゴーストタウンすら彷彿させる不気味な雰囲気である。
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