インドネシア高速鉄道、「試乗会」で見えた実力 最高時速は350km、「中国式」らしさはある?
日本案ではカラワンではなく、その手前のチカラン付近に駅が予定されており、メイカルタもそれを当てにして開発していた。ただ、カラワン駅からも直線距離にして10km弱しか離れておらず、駅から数kmの範囲内にはトヨタも入居する日系工業団地があり、イオンモールも建設中である。行政がイニシアチブを取り、一帯の道路整備、駅周辺の区画整理が実施されることを期待したい。
カラワンを過ぎると進路を南に取り、緑豊かなジャティルフール湖畔をかすめるように進んでいく。在来線ならば、バンドンへ向かう山岳区間の入り口、プルワカルタ付近である。高速鉄道はここから標高695mに位置するパダラランまで一気に勾配を駆け上る。一方、在来線のプルワカルタ―パダララン間は今から約120年前、オランダ植民地時代に建設されてからほとんどテコ入れがなされておらず、山岳区間でありながらトンネルは1カ所のみ、それ以外は尾根を縫うようにして走るため、同区間だけで1時間半を要する。それが高速鉄道ではトップスピードを維持したまま、わずか10分ちょっとで駆け抜けてしまう。
この間に11カ所のトンネルがあるが、最も長い4478mの第6トンネル以外は、長くても1000mほどしかなく、ずっとトンネルで車窓が真っ暗というわけではない。車両の気密性はかなり高いようで、トンネル内での「耳ツン」はない。これだけの高低差を一気に上れば気圧の変化で耳に違和感がありそうだが、それもなかった。トンネル内ではちょうどハリム行きの列車とすれ違ったが、この騒音も気にならなかった。
バンドンへは「フィーダー列車」で
美しい棚田を谷間に架かる橋で越え、減速しながら第10トンネルに入ると、この列車の最初の停車駅、パダラランである。ハリムからわずか30分だ。在来線ならば、始発のガンビルを出てブカシに着くか着かないかという時間である。トンネルを抜けると在来線が右手に現れる。距離感と相まって、まるで北陸新幹線で軽井沢に到着する感覚だ。
パダララン駅はバンドン中心部へのアクセス向上のため、後から設置が決まった駅である。2023年初めの時点では駅舎はおろかホームすら完成していなかったが、半年足らずで仕上げた。開業後はここから在来線のリレー快速列車(当地ではフィーダーと呼ぶ)が運行され、途中、バンドン都市圏の一角を占めるチマヒに停車し、バンドンまで18分ほどで結ぶ予定である。
バンドンに直接乗り入れる計画だった日本案に対し、フィーダー列車に乗り換える必要性がある点は中国案への批判材料となっている。だが、仮に在来線のバンドン駅にそのまま乗り入れたとして、駅からはタクシーかオンライン配車アプリを使う以外に二次交通が存在せず、しかも駅前道路は大渋滞である。とくに観光客の場合、バンドン中心部に用がある人は少ない。ならば高速道路にも近く、郊外のレジャースポットにアクセスしやすいパダラランやチマヒで乗り換えたほうが、ストレスにならないのではないか。
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