武田薬品が欧州製薬企業の買収に合意。96億ユーロ(1.1兆円)投じて新興国進出の足掛かり得る
武田薬品工業は19日、欧州の製薬企業ナイコメッド社(米国の皮膚科事業を除く)の全株式を、96億ユーロ(約1兆1000億円)を投じて買収することで、同社の株主と合意したと発表した。武田は、ナイコメッド社が持つ欧州や新興国の販売網や慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬などの新薬を獲得。糖尿病治療薬など主力薬の特許失効で鮮明化する業績の下降に歯止めをかけるための道筋をつけることに成功した。
ナイコメッド買収で、新興国市場でのプレゼンスは大きく高まる。武田の2010年の新興国における売上高はわずか178億円にすぎなかったが、ナイコメッドが加わることで、9倍近い1426億円に急増(現地子会社の売上高ベース)。手薄だった新興国での販売の足がかりを得る。また、欧州での販売額も、倍以上の3000億円近いに達する。
武田は買収に際して、ナイコメッド社の現経営陣や幹部社員の維持に力を注ぐとしており、経営の意思決定については当面、大きく変わらない見通しだ。
武田の連結業績にも大きな寄与が見込まれる。年間売上高約3000億円のナイコメッド社が加わることで、特許切れで落ち込む売上高の押し上げが可能になる。営業利益についても、「買収に伴う特殊要因を除外したベースで営業利益を40%強改善する」と武田は明らかにしている。
武田の長谷川閑史社長は、同社の弱点を補強するための大型M&Aをここ数年来模索しており、外国人を立て続けに経営の中枢に据えて、買収先を探してきた。今回の買収合意では、外国人幹部が役割を発揮した形だ。
長谷川氏は今年春、経済同友会の代表幹事に就任。今回の大型買収によって業績立て直しの道筋が立ったことで、来年に向けて社長交代、会長就任の可能性も高まったと言えそうだ。
(岡田 広行 撮影:今井康一 =東洋経済オンライン)
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