伊勢丹「5日間で1億円」売る若者向け催事の波及力 婦人服売り場「常設廃止後」にECと催事で再浮上

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複数カテゴリの商品を横串で展開する手法は、主に伊勢丹新宿店の2階で取り入れられてきた。同店では2019年4月に営業部の体制を刷新し、アパレルや服、雑貨など売り場ごとに縦割りだった仕入れ体制を見直した。これまでアパレル・宝飾品・食品などアイテムごとに営業部が商品を仕入れている三越伊勢丹の中では、異例の取り組みとなる。

2020年4月に前身の営業部から名前を変えた新宿店2階「クロスMD営業部」では、百貨店の新客となりうる若年層の開拓を目的としてニーズに合った柔軟な仕入れを行っている。

試行錯誤の末に新宿店2階には、20代半ばの顧客が徐々に増えてきた。「できればもっと早くから三越伊勢丹とのつながりを持ってもらいたい」(﨑谷氏)と、10代後半などさらに若い客層拡大の一翼をアキュートガールが担っている。

課題は来場客の「買い回り」

催事を通じて多くの若年顧客を獲得できても、現状はその後の買い回りにつながらないという課題がある。

とくに11月開催のアキュートガールで取り扱うブランドは、ネットを主戦場にしたD2Cブランドなど比較的安価な商品も多く、百貨店内の他の商品との価格差が大きい。また、﨑谷氏によれば「三越伊勢丹で取り扱ったブランドが、ファッションビルのルミネやラフォーレなどに常設店舗を出すことも多い。競合との差別化が必要」と難しさもある。

今のところアキュートガールは年4回の催事を引き続き開催していくことで、顧客接点を維持することに注力する。新規開拓と既存ファンを取りこぼすことなく深堀りし、買い物スポットとして三越伊勢丹が選択肢に入ることが目標だ。構造的な課題となっている百貨店の客層拡大は一朝一夕では実現できない。業界最大手の地道な取り組みは続く。

山﨑 理子 東洋経済 記者

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やまざき りこ / Riko Yamazaki

埼玉県出身。大学では中国語を専攻、在学中に国立台湾師範大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在小売り・アパレルを担当。趣味はテレビドラマのロケ地巡りなど。

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