2つの「Apple Watch」に搭載された注目の新機能 25%電力消費を抑え、「ダブルタップ」に初対応

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質感は必ずしもレザーを代替するものではなく、布系の手触りだが、織りの方向を変えることで、起毛しているような表現や、逆にビシッと仕立てられたスーツのような光沢を返す表情を見せる。

エルメスブランドのApple Watchも引き続き販売されるが、アップル経由での販売は布やラバー系の素材のバンドに限られ、レザーのバンドはエルメス直営店で販売が継続される。アップルの規模でレザーを扱う場合、環境負荷を下げることが難しいという。一方エルメスは、環境に配慮しながら少量生産を行っているとのことだ。

Nikeスポーツバンドは、細かいチップを生かし、リサイクル材を使っていることをアピールしている(筆者撮影)

エルメス同様コラボレーションが続くナイキからは、リサイクルエラストマーを32%含むスポーツバンドや、68%の廃棄されたナイロンを用いたスポーツループが登場している。廃材を使っていることのアピールを、デザインとして紹介しており、こちらも人気の商品となりそうだ。

必需品として押し上げられるか?

Apple Watchの新モデルには、第2世代超広帯域チップ(UWB)が搭載され、Apple WatchからiPhoneの位置を正確に見つけ出す機能が実装された、とアナウンスされている。しかし日本では、無線通信の問題でこの機能は実装されず、ハードウェア自体が異なるため、将来的にも使えるようにはならない見込みだ。

そのほか、引き続きSOS通報機能、転倒検出、車の事故の検出、頻脈、徐脈の検出など、命を守る機能が搭載され、日々の生活を支える機能は引き続き充実する。

アップルは2015年にApple Watchを「最も身近なアップル製品」として登場させ、わずか3年で、それまで長らく腕時計の世界売り上げトップだったロレックスを抜き去り、売上高世界一の腕時計ブランドとなった。それは、人々が腕時計に対して抱いていた「時間を知る道具」というイメージを壊し、それ以外の目的で時計を腕に着ける「行動変容」を起こしたからだ。

スポーツの計測、健康を守る機能、サバイバルのための道具、そしてAIを身につける道具と、少しずつApple Watchに対する目的を変化させている点も、アップルがApple Watchを陳腐化させないための取り組みに躍起になっている表れと言える。

そして環境については100%カーボンニュートラル化を実現し、大きく前進した。Z世代の8割が環境に配慮した購買を行うとされている中で、Apple Watch自身も、時代や世代と対話しながらきちんと変化をしている。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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