内閣改造の評価散々「林、木原ダブル交代」の裏側 派内ライバル牽制と、美談仕立てのお芝居

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岸田首相と極めて親しい政界関係者は「岸田首相と木原氏の間では、8月初めに退任が決まっていたが、官邸側近にもそれを伝えなかった」と解説する。同関係者は「岸田首相は留任させようとしたのに本人が『内閣に迷惑をかける』という理由で断るという“美談”にして、木原氏のイメージダウンを防いだお芝居」と苦笑する。

一連の伏せられた経緯については、岸田首相や木原氏は「決して口にしないで闇に葬る構え」(岸田派関係者)だとされる。ただ、同時進行となった「林氏と木原氏のダブル交代」は、岸田首相の足元の岸田派内に複雑な波紋を広げたのは間違いない。

そもそも、「外相退任後は党のしかるべき役職に」と求めていた林氏に対し、岸田首相は人事断行の際、「君には派閥の面倒をみてほしい」と伝え、結果的に無役にした。これに対し林氏は「困惑と不満を隠して、とりあえず派内の各議員との懇親を深めることにした」(林氏周辺)という。

これとは対照的に木原氏は幹事長代理と政調会長特別補佐に任命される方向だ。「岸田首相の懐刀として、茂木敏充幹事長や萩生田光一政調会長の監視役を務める」(岸田派幹部)ということで、「林氏との待遇の差は歴然」(同)となる。

ただ、林氏の後任外相に岸田派幹部の上川陽子氏を起用した人事には、同派内から「なんで上川氏ばかりが重用されるのか」(閣僚経験者)との不満も噴出。それが岸田首相の派閥領袖としての対応への不信感にもつながっているのが実情だ。

岸田派含め各派が「人事」に不満

今回の人事を受けての各種世論調査では、「多少のばらつきはあるものの、支持率回復にはまったくつながらなかった」のは厳然たる事実。しかも、「政権安定を優先した岸田首相が派閥順送り人事を受け入れたのに、岸田派だけでなく、各派閥がそろって不満を漏らしている」(自民長老)という実態は「岸田首相にとっても想定外」(官邸筋)とされる。

その岸田首相は19日午前、ニューヨークに向けて政府専用機で羽田空港を出発した。同日午後(日本時間20日午前)に国連総会一般討論演説で核軍縮への決意を表明するなど「得意の岸田外交」で存在をアピールして、帰国後の政局秋の陣に臨む構え。

ただ、訪米出発前の19日朝には官邸で木原氏と密談したうえで自民党役員会に臨むなど、「木原氏を介した党運営への目配りも欠かさない」(官邸筋)ことが、「今回のダブル交代での岸田首相の本心がにじむ」(自民長老)ことは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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