孫正義はいかにしてジョブズを口説いたか 交渉前に勝負を決める交渉術
孫正義は、2006年には自社の携帯電話を買うとiPodがついてくるというキャンペーンを始め、2006年の年末にはすべての機種でセットキャンペーンが行われることになった。このとき、おそらくソフトバンクはiPodの取扱高では日本で有数の規模だったはずだ。
また、ソフトバンクモバイルは2006年6月に、ロゴの変更を発表した。これは現在のソフトバンクのロゴと同じく、銀色の2本線のロゴだ。この銀色のカラーリングは、実はiPodのカラーリングにきわめて近いものだった。
同時期に、携帯電話の販売店舗も、ボーダフォンショップからソフトバンクショップへの改装が進められた。このデザインも、アップルショップを思わせる白を基調にしたデザインとなった。このようにアップル社との協業や受け入れ態勢作りをしながら、孫正義はスティーブ・ジョブズと交渉を進めていたのだ。
そして、ジョブズとの大詰めの交渉では、「ワイヤレスインターネットについてのビジョン」や「ソフトバンクがアジアナンバーワンのインターネット企業である」ことに加えて、これらの協業実績や受け入れ態勢作りをプレゼンテーションして、iPhoneの独占販売権を得たことは間違いないだろう。
世界級経営者との交渉はプレゼン前に勝敗が決している
世界のトップレベルの経営者同士の交渉で重要なことは、その会議の場でのプレゼンテーションの良しあしではない。プレゼンテーションの背後にある過去・現在・未来を貫くその経営者の思想や経営に対するコミットメント・戦略・ビジネスモデルなどが、結果としてプレゼンテーションに集約されているだけなのだ。見かけだけの資料を作っても、そのような資料は見透かされてしまう。
このように今振り返ると、実は、ドコモとソフトバンクのどちらがiPhoneの販売権を得るかという勝負は、最終局面でジョブズとの会議が始まる前に、すでに決着がついている状態だったのだ。「交渉は“鯉とりまーしゃん”に学べ」なのだ。
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