JR貨物にとって「物流の2024年問題」はチャンスか 貨物鉄道輸送150年、執行役員に聞く今後の展開
同線区は北海道と本州を結ぶ唯一の鉄道ルートを形成しており、現状では「年間約400万トンの輸送量があり、北海道発のたまねぎの6割、馬鈴薯の4割、北海道着の宅配便の3割の輸送」(北海道交通政策局交通企画課資料)を担う物流の大動脈である。また、JR貨物にとっても、「北海道なくして、当社の経営は立ちゆかない」(JR貨物関係者)重要線区である。
鉄道による北海道―本州間の貨物輸送ネットワークの維持に関しては、これまで国交省、北海道庁、JR北海道、JR貨物の4者による実務者レベルの連絡会において検討がなされてきたが、2023年7月に存続の方向性が妥当であることが確認され、最終的には年内に立ち上げる有識者会議により、2025年度中をメドに結論が出される見込みとなっている。
今回、存続の方針となった理由としては、本州と北海道を結ぶ物流の大動脈であることに加え、カーボンニュートラル実現や物流の2024年問題等への配慮、さらに国防上、防災上の観点なども挙げられている。
存続でも課題は山積
ただし、存続が決定したとしても安心はできない。前述の通り、函館―長万部間についても旅客列車は廃止される公算が高く、そうなればJR貨物の単独線区ということになる。JR貨物は現在、ほぼ全営業区間において、旅客会社へ線路使用料を支払って貨物列車を運行する第二種鉄道事業者である。単独線区となれば第三セクター設立による上下分離方式を導入するにせよ、これまでにない対応が求められることになる。
最大の課題は莫大な維持費用である。北海道庁は、函館―長万部間の鉄道を維持する場合(貨客双方の維持前提)、分離後30年間で差し引き816.8億円の累積赤字(うち初期投資額288.6億円)となると試算している(2022年8月付)。
しかし、JR貨物は近年の好業績期でも経常損益ベースで89.9億円の黒字(2020年3月期)に過ぎず、直近では43.6億円の赤字(2023年3月期)を計上するなど財務基盤は脆弱と言わざるをえない。また、高齢化先進地域である沿線自治体は言うに及ばず北海道の財政も逼迫している状況にある。
しかも、上記試算に収入として見込まれている「貨物調整金」(鉄道・運輸機構による整備新幹線の旅客会社への貸付料などが財源)制度の将来的な財源も不透明(2022年7月9日付記事「貨物列車の存続握る並行在来線が抱える財源問題」)な状況にある。結論を言えば、路線維持には国によるこれまでとは異なる財源からの、相当な割合の支援が必要ということになろう。
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