JR貨物にとって「物流の2024年問題」はチャンスか 貨物鉄道輸送150年、執行役員に聞く今後の展開
――災害発生時の対応は進歩しているか。また、今後の課題として、どのようなことがあるか。
ノウハウの蓄積もあり、対応能力は上がってきている。以前に比べて災害発生時の初動における代替輸送体制の立ち上げなども、計画通りにスムーズに行えるようになった。課題としては貨物列車の積載量に対し、代替輸送量が、まだまだ足りていないことがある。2018年の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)による不通時で、30%弱程度しか確保できておらず、その能力を高める必要がある。加えて、現在は鉄道貨物の基本となる12フィートコンテナを中心に代替輸送を行っているが、今後は大型コンテナや危険品積載コンテナの輸送などに関しても、柔軟な対応が求められる。
――今後、力を入れていく事業領域はどういった分野か。
我々は鉄道会社であり、これまで「鉄道で運ぶ」ということを第一目的として仕事をしてきた。しかし、近年は「総合物流事業」の推進、つまり運ぶことに加えてお客様にとって付加価値の高いサービスを提供するという方向性をJR貨物グループ全体で打ち出している。その具体例として、東京貨物ターミナル(東京都品川区)駅構内に2022年7月までに竣工したマルチテナント型物流施設「東京レールゲート」を挙げることができる。同施設は汎用性の高い仕様となっており、集荷・配達・保管・荷役・梱包・流通加工等のサービスをワンストップでお客様に提供することが可能だ。また首都高速・東京港国際コンテナターミナル・羽田空港など陸海空の交通手段へのアクセスが至便という立地メリットもある。
今後は、お客様にメリットを感じていただける、より使い勝手のいいサービスを提案できるよう、一層の企業努力をしていく考えだ。
北海道新幹線延伸の影響は?
以上のほか、JR貨物関連のニュースとして北海道新幹線の札幌延伸(2030年度予定)にともないJR北海道から経営分離される並行在来線の今後のあり方が注目されている。本件について、今回のインタビューでは「結論が出ていない案件のためコメントは差し控えたい」とのことで話は聞けなかったが、現況をまとめておきたい。
並行在来線のうち、長万部―小樽間についてはすでにバス転換が事実上決定している。函館―長万部間についても旅客輸送に関しては、やはりバス等へ転換される公算が高く、問題となるのが貨物輸送の維持である。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら