JR貨物にとって「物流の2024年問題」はチャンスか 貨物鉄道輸送150年、執行役員に聞く今後の展開

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――2022年度の品目別輸送実績を見ると、「宅配便等」(313万トン)が全体の17%を占め、「食料工業品」(291万トン)、「紙・パルプ等」(209万トン)を上回り、コンテナ輸送で1位を占めている。これは最近の傾向か。

「宅配便等」は、この5年くらいで伸びてきている。やはり物流の2024年問題への危機意識から、宅配業界においても、トラック輸送から鉄道輸送へのモーダルシフトの動きが出てきている。中でも、ブロックトレイン(特定の荷主が貨物列車を借り切って運行)の利用が増えている。宅配の需要はコロナ期においても底堅く、今後も増送が見込まれる。

石勝線 コンテナ貨物列車
北海道・石勝線を走るコンテナ貨物列車(写真:JR貨物提供)

顧客・JR貨物双方に利点「ブロックトレイン」

――ブロックトレインとはどのようなものか。

お客様(主に運送事業者)のニーズに合わせて、発駅・着駅、列車ダイヤ(発・着時刻)などを設定する専用の列車であり、基本的に複数年単位でご契約いただく。お客様にとっては、安定的に貨物を運ぶことができるメリットがある。

また2022年3月のダイヤ改正からは、フォワーダーズブロックトレインという鉄道利用運送事業者(フォワーダー)向けのブロックトレインの運行を開始した。利用運送事業者に貸し切りでご利用いただくことで、その先にいる荷主は、「片道か往復か」や「荷量の大小」などを意識せず、気軽に利用することが可能になる。

――JR貨物にとって、ブロックトレインを運行するメリットは何か。

まずは、使い勝手のいいサービスを提供することで、鉄道輸送へシフトするお客様のニーズを取り込めるということがある。また、全体最適化を迅速に行うことができるメリットが大きい。具体的には、24両編成の貨物列車には12フィートコンテナ換算で120個のコンテナを積載できるが、台風等での列車運休時に代替措置を講ずるに当たって、120名のお客様と話をし、個別のニーズを不満なく取り込むのには限界がある。その点、ブロックトレインならば、特定少数のお客様と打ち合わせ、迅速・的確な対応が可能になる。さらに列車単位で、しかも長期で契約いただくことから、当社にとっては経営安定化にも資する。

ブロックトレイン
特定の荷主や運送事業者などが列車を貸し切って利用するブロックトレインは顧客・JR貨物の双方にメリットがある(写真:JR貨物提供)
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