院長不在が長期化、無医地区続出の恐れ、被災地が抱える医療問題
約1万1000人が住む宮城県気仙沼市本吉地区(旧本吉町)。地域で唯一の医療機関(歯科診療所を除く)として、住民への医療を担ってきた気仙沼市立本吉病院(病床数38床)で、院長不在の異常事態が2カ月以上も続いている。
きっかけは3月11日に発生した東日本大震災だ。本吉病院には大人の背の高さの津波が押し寄せ、医療機器が使用不能になった。2階への避難で患者や職員の生命は守られたものの、震災後休む間もなく診療に当たってきた院長が、入院患者全員を岩手県内陸部の病院に搬送させた直後に、辞表を提出する事態になった。もう一人の医師も震災後、長期の病休に入っており、院長および常勤医師不在に陥った。
そうした中で本吉病院の診療機能を肩代わりしてきたのが、民間医療機関ネットワーク最大手「徳洲会」や全国国民健康保険診療施設協議会(国診協)などの医療支援チームだ。全国からの医療スタッフによる支援を受けて、本吉地区では「医師不在」は回避されているものの、住民の間に「病院がなくなるのでは」との不安がくすぶっている。
千田孝昭・気仙沼市本吉総合支所長は「市としても絶対に無医地区にしないという決意で取り組んでいる。具体的には、菅原茂市長のルートで院長探しを進めている」と言うが、5月12日時点でも「院長招聘のメドは立っていない」(本吉病院の鈴木孝志管理課長)と言う。