英国人、「おもてなし至上主義」日本に違和感 わざわざ海外に「もてなされ」に行きますか?

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しかし、「おもてなしで観光立国」なんてことが、本当に可能なのでしょうか? そんな疑問に答えるために、まずは「おもてなし」が十分な観光の動機になるのか、検証していきましょう。

外国人観光客が日本にやってくるには、大変な出費が必要です。時間もかかるので、会社も休まなくてはいけません。ここで、みなさん自身に置き換えてみてください。「おもてなし」だけにそのような対価を払うかといえば、ちょっと考え込んでしまうのではないでしょうか。

たとえば、気候が悪くて、歴史や文化にそれほど特徴もない、食事もそんなにおいしくない、外国人から見ると魅力の少ない国だけれど、国民だけは「おもてなし」をしてくれる。そんな国へ旅行してみたいと思いますか? それだけではなかなか、動機にならないはずです。

もちろん、気候もいい、歴史や文化もある、観光資源もたくさんある、さらに「おもてなし」を提供してくれるというような国であれば、「観光大国」になるかもしれません。しかし、この「おもてなし」というサービスが必須条件かというと、そうではありません。それを証明するのが、フランスです。

ホスピタリティがなくてもフランスは観光大国

フランスは約8470万人の外国人観光客が訪れる世界有数の観光大国ですが、「おもてなし」がすばらしいかというと、決してそのような評価ではありません。

フランス観光庁の観光戦略の中で、課題のひとつとして「ホスピタリティのなさ」が挙げられているように、むしろレベルが低いという印象で、中でもパリの人々の「おもてなし」が悪いという評判は、欧州でも非常に有名です。この事実が示すように、「おもてなし」というのは、観光大国の必須条件ではないようです。

また、諸外国の観光資料を分析すると、ほとんどの国がホスピタリティを自国の魅力として明記しています。これは冷静に考えれば当然で、外国人を呼ぼうというのだから、自国にホスピタリティがないなどと言うわけがなく、どの国もその国ならではの「おもてなし」が存在するとアピールするのは、当たり前なのです。

ただ、日本ほど、「おもてなし」を観光戦略の中心に据える国はありません。ほとんどの国は上から数えて半分以下、7つ魅力を並べたらせいぜい4番目か5番目という位置づけなのです。

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