段差なしでバリアフリー「超低床電車」仕組みは? 機器類の配置を工夫、車軸のない特殊構造も
2002年4月に土佐電気鉄道(当時・2014年からとさでん交通)が導入した100形「ハートラム」は、3車体連接構造の「タイプL(Long)」を採用した。両端車はタイプSを半分にしたような構造で、超低床部分の床高さは350mm。中間車にも車軸付きの台車を装着しているため床高さは480mmで、両端車とはスロープで結ばれている。
福井鉄道が2023年3月に導入したF2000形「FUKURAM Liner(フクラムライナー)」もタイプLを採用している。中間車は台車の構造を改良して、両端車との通路の高さの差をわずかとした。ただし座席部分の床は高くなっている。
世界初「単車で100%超低床」も登場
ここまで紹介したタイプは100%超低床ではなかったが、アルナ車両はモーターを車体のレール方向に搭載して車軸を駆動する車体装架カルダン駆動方式を採用することで台車部分も低床化した「タイプU」を開発した。UはUltimate(究極)の頭文字だ。
タイプUを初採用したのは長崎電気軌道で、2003年から3000形として3編成導入。中間車がフローティング車体の3車体連接構造だ。超低床部分の床高さは380mm、台車部分の床高さは480mmで、スロープで結ぶことにより100%低床化を実現している。
アルナ車両はタイプUの電動バネ式ブレーキを空気ブレーキに変更した「タイプUa」も開発。現在のリトルダンサーシリーズの中核となっている。初登場は2008年の豊橋鉄道T1000形「ほっトラム」で、2010年に富山地方鉄道T100形「サントラム」、2011年に長崎電気軌道5000形、2013年に札幌市交通局A1200形「ポラリス」、阪堺電気軌道1001形「堺トラム」、2015年に筑豊電気鉄道5000形、2018年にとさでん交通3000形「ハートラムⅡ」、2020年に阪堺電気軌道1101形と、多くの事業者が採用している。
タイプUを2車体連接化した「タイプC2」も登場し、函館市交通局が2007年から9600形「らっくる号」を順次導入している。
タイプU・Ua・C3は特殊な駆動方式で全低床化を実現したが、その後アルナ車両は東洋電機製造が開発した超小型のモーター(直径305mm)と駆動装置を採用して、従来車両と同じ台車架装形の平行カルダン駆動方式で全低床化を実現した「タイプX」を開発。床高さは基本350mm、台車部分450mmとなっていて、スロープで結ばれている。
タイプXは2017年から導入している鹿児島市交通局7000形「ユートラムⅢ」が採用。さらにタイプXを単車仕様とした「タイプN」も登場した。単車の100%低床車は世界初で、長崎電気軌道6000形が採用している。
アルナ車両は純国産と扱いやすさを意識してリトルダンサーシリーズの改良を行ってきた。現在では単車タイプの100%超低床車という独自のジャンルも確立。今後の発展も期待される。
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